Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
Biz Law Hack本館はこちら。http://bizlaw.ldblog.jp/

4月11日から、JOBS Actの意見募集が始まりました。
http://www.sec.gov/news/press/2012/2012-60.htm

JOBS Actとは、Jumpstart Our Business Startups Actの略です。

無理やりJOBSにしようとするあたり、HIRE Actに通じる邪悪さを感じますが、これは全然邪悪な法律ではありません。

内容としては、証券法・取引所法の開示義務を緩和するものです。

法律の名前からするとスタートアップの会社に関する法律に見えますが、スタートアップに限らず開示義務を緩和している点もあります。

たとえば、取引所法Section 12では一定の株主数・株式額の会社についてSEC登録義務を定めていますが、JOBS Actにより基準が緩和されます。なお、12g3-2(b)についてはこちらを参照。

また、Reg DのRule 506については、accredited investorのみを対象とするのであれば、general solicitation/general advertisementは禁止されなくなります。 general solicitation/general advertisement があっても私募として扱ってくれるとは、かなり太っ腹です。

さらに、Rule 144Aでも、 general solicitation/general advertisement が認められることになります。ただし、買い手が適格機関購入者(QIB)の場合か、QIBだと合理的に信じた場合に限られるようなので、どの程度実務に影響があるかはわかりません。

この他、クラウドファンディングについて定めており、英文ニュースなどではここにフォーカスするものも多いですが、日本にいる限り、実務的には重要性は乏しそうです。

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米国に、HIRE Actという悪名高い法律があります。正式名をHiring Incentives to Restore Employment Actといいます。略称をHIRE Actにしようと名前を無理してつけた感じからも、かなり邪悪な雰囲気が醸しだされています。

これは、いま話題のFATCAについて定めていたりもします。FATCAについては過去にエントリがあるので、興味のある方はこちらを参照。

今回のエントリは、FATCAではなく、米国源泉利子の源泉徴収についてです。

内国歳入法Section 871(h)とSection 881(c)は、 米国に源泉のある利子について一定の要件を満たす場合、非米国人に対する課税を免除しています。

これまで(3月18日以前)の免除要件は、以下のとおりでした。
  • 記名式のものはあれこれ書類を整えた場合に限り、免除。
  • 無記名式のものは、ゆるく免除。
3月19日以降、下のほうの免除がなくなりました。そのため、無記名で出す社債なんかは30%の源泉徴収が適用されてしまいます。

何が記名式か、というのはIRSがガイドラインを出しています。No.2012-20というのが新しく出たものです。基本的に振替制度を使っていれば記名式でよいのですが、現物債と交換可能だったりすると無記名式として取り扱われます。

いままでは、無記名式にしたほうがお得だったものが、記名式にしないと損するということで、取扱いを変える必要がある場面も多いと思います。

記名式の場合、あれこれ書類を整える必要があるのですが、これについては、FRTO(Foreign-targeted Registered Obligation)の例外というのがあります。2014年1月1日までの時限的なものですが、書類要件について多少緩和されています。


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タイムリーすぎるタイトルですが、報道になっている件ではなく、前回に引き続きアメリカの話です。

情報提供者をTipper、情報受領者をTippeeと言います。

情報受領者が受領した情報に基づいて取引した場合には、インサイダー取引違反とする必要があります。ですが、何でもかんでも捕捉するのでは広すぎるので、判例法上、「個人的な利益(personal benefit)」が要件とされています。

したがって、情報提供者において、情報開示の見返りとして個人的な利益を得るつもりがなければ、インサイダー取引の責任は問われません。そして、情報提供者が問題なしなら、受領者も責任を問われることはありません。

例えば、会社の役員が非公開情報を一部投資家に提供したとしても、それだけでは発行者株主に対する「裏切り」はありません。なので、受領者のほうで非公開情報を使って取引を違法なインサイダー取引とはされません。

日本のルールに慣れていると、直感的には捉えにくいかもしれませんが、アメリカでは「裏切り」があったかどうかを中心に据えているというのを忘れなければ、わかりやすいかもしれません。

日本の場合、周知する方法として「公表」の意義が具体的に定められており、これによって非公開情報を公にしていくのですが、アメリカではインサイダー取引との関係では「公表」でインサイダー情報性を解消するということにはなっていません。

「裏切り」がなければ一部の人にだけ情報を提供してもいいんじゃないの?というのがアメリカのインサイダー規制です。

でもそれでは情報の非対称性を生み、情報をもっている一部の人が他の人を食い物にしてしまいます。そこで、Regulation FDというのがあり、公表するときはちゃんと周知することが求められています。

日本とはかなり構造が違いますね。 Regulation FDは、インサイダー取引とは関係していますが、 日本とは異なりインサイダー規制に組み込まれているわけではありません。

主な参考判例
前回:O'hagan
今回:Dirks
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