Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2010年02月

ロースクールとあまり関係ないですが、しかも当たり前のことですが、少しでも多くの人にきちんと理解してもらうために、投資事業有限責任組合と登記の関係、具体的には、登記がどういう効力をもつか、について書いてみます。

まず、3条1項柱書です。

投資事業有限責任組合契約(以下「組合契約」という。)は、各当事者が出資を行い、共同で次に掲げる事業の全部又は一部を営むことを約することにより、その効力を生ずる。

契約の効力発生について、わかりやすく書いてあります。「約する」と契約の効力発生です。

次に4条1項です。

この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。

登記の効力について、わかりやすく書いてあります。対抗要件です。

本当は、ここで終わりなのですが、なんでわざわざ書くかというと、以下の点をはっきりさせたいからです。

”登記上の制約があったって、実体法上の効果は生じている。”

登記実務上許容されない(=登記できない)ことがあっても、善意の第三者に対抗できないだけで、当事者間では有効です。

第三者に対抗できないと困るから登記の事情にあわせて契約書を変えるというのはあっても、登記それ自体のせいで契約書を変更する必要はありません。

でも、実務ではこのような理屈をわかってもらえないことがあります。
困ったものです。


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2.「会社型」とは

次は、「アメリカの投信は会社型である」の意味です。

上記のとおり、米国でポピュラーな公募ファンド であるミューチュアル・ファンドには、信託形態を用いるものもあります。それにもかかわらず、「アメリカの投信は会社型である」といわれます。

日本では、契約型=投資信託、会社型=投資法人、という分け方になっているので、わかりやすいのですが、信託形態のものがなぜ「会社型」といわれるかはわ かりづらいと思います。

これは、ガバナンス体制のためです。

1940年投資会社法(Investment Company Act of 1940)では、公募ファンドはその機関として、取締役会(board of directors。会社形態の場合)又は受託者委員会(board of trustees。信託形態の場合)を有することが求められています。

そして、ファンドの重要事項については取締役会又は受託者委員会 の承認、重要度が最大級のものについては持分保有者(shareholder)の承認が必要とされており、通常の株式会社に似たガバナンス体制とされてい ます。

さらに、形式論だけですが、投資会社法の条文の建て付け上も、信託形態のものも、「投資会社(investment company)」と呼ばれ、受託者委員会のメンバーは取締役に含まれると定義されているなど、信託形態でも会社として扱うということが姿勢として示され ています。

このため、アメリカの「投信」は「会社型」といわれます。

「会社型」と「契約型」の違いは、法的な形式ではなくて、実質的な点にあります。

日本の投資信託も、ごく限られた場合ですが、受益者の承認が必要と差れる場合があるので、「会社型」としての性格も一部あるといえます。



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「投信」には、契約型と会社型があるといわれています。そして、「アメリカの投信は会社型である」と言われています。これが、何のことかようやくきちんとわかったので、概念を整理してみます。

1.「投信」とは

普通に考えると、「投資信託」のことを意味しそうなのですが、投資信託は信託なので、会社型の投資信託というと、それだけで矛盾しているように見えます。

また、アメリカの「投信」といえば、ふつうはミューチュアル・ファンドなのですが、コーポレーションである場合と、ビジネス・トラストである場合があります。ビジネス・トラストもやはり信託なので、会社型と言ってしまうと、それだけで矛盾しているように見えます。

なんでこうなるかというと、ここで言う「投信」は、投信法の投資信託とは違うからです。

ここでの「投信」とは、一般投資家に対して公募されるファンドのことをいうと理解されます。そして、ファンドとは、投資家によって出資された資金をひとまとめにして、専門家によって運用されるいわゆる集団投資スキームをいいます。

個人的には、「投信」と呼ぶよりも、公募ファンドとでも呼んだほうが誤解がなくて良いのではないかと思いますが、日本では長らく、公募ファンドといえば投資信託しかなかったので、「投信」と呼ばれているのだろうと思います。

以上をまとめると、「投信」には、狭義の「投資信託」という意味と、広義の「公募ファンド」という意味があると整理できます。

なので、日本の投資法人も、広義の「投信」に含まれます。


続きます。


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では、投資家にとって好ましいかどうか。

投資家にとっては、そのままでは特にメリットはありません。

ですが、すでにポートフォリオ会社の買収が終わっているのであれば、投資家としては、買収チームが暇にしていようが、他のファンドのために働いていようが、特に気にすることはありません。(投資から回収した資金を再度投資にあてることができる場合は別ですが、このようなファンドはほとんどないと思 います。)

そのため、ファンド運営者の希望通り、承継ファンドの設立を許容する規定が契約書に設けられることが多いと思われます。

投資家サイドとしては、買収チームのコストが承継ファンドの管理報酬でカバーされることになるので、承継ファンド設立後の管理報酬につき減額を求めることも あります。

管理報酬を減らす場合には、(当たり前ですが)分母を減らす方法及び/又はパーセンテージを減らす方法があります。

分母の減らし方のパターンとしては、
①キャピタル・コールをかけた金額まで減らす、
②ポートフォリオ投資に使った金額まで減らす(管理報酬・組合費用分だけ①より少ない)、
③投資されている金額まで減らす(投資回収下分だけ②より少ない)、
などがあります。

管理報酬の根拠がファンド運営者のコストであることからすると、③が一番フェアなようにも思われますが、買収チームが承継ファンドのために働いても、投資家サイドには特に損失はないはずなので、どの程度強く主張できるかは、当事者間の交渉力次第になります。

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最近ファンド契約書ブログになってしまってますが、承継ファンドについて、忘れないうちにまとめておきたいと思います。

ファンドがせっせと会社を買収していき、ファンドの出資約束金額(キャピタル・コミットメント)を使い果たしてしまった場合、ファンドとしてはもはや新しい会社の買収は出来なくなります。

そうすると、ファンド運営者(またはこれに対するサービス提供者)の、投資案件の発掘、投資会社のデューデリ、投資のためのその他諸々のアレンジをする必要がなくなるので、これに携わっていた人たち(買収チーム)の仕事がなくなってしまいます。

管理報酬が買収チームの人件費をカバーしていれば、ファンド運営者にとって直接的な経済的損失はないのですが、買収チームがマーケットから離れてしまうというデメリットは非常に大きいと思われます。

また、買収チームが良い投資案件を潜在的に持っているものの、出資約束金額の関係で投資できないということがあります。この場合には、ファンド運営者としては、投資家から新たに資金を集めて投資案件を成就させたいところです。

そのため、ファンドの出資約束金額のほとんど(8割とか)を使ってしまった場合にはファンド運営者は新しいファンドの設立することができるという規定を契約書に入れることがあります。この新しいファンドのことを承継ファンドと呼んだりします。

これによって、買収チームはこの承継ファンドのために働くことができますので、承継ファンドはファンド運営者にとって好ましい仕組みです。


続きます。

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