Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2010年04月

何が"plan assets"に該当するかについては、Section 3(21)が定義していますが、レギュレーションが詳細に定めています。PEファンドに関係があるのは、29 C.F.R. Section 2510.3-101です。

このレギュレーションは、以下のいずれかに該当する場合、ファンドの資産は"plan assets"に該当しないとしています。

1. ERISA適用ファンド(プラン)の投資先であるファンド(投資先ファンド)の持分が公募された有価証券である場合
2. 投資先ファンドが投資会社法上の登録投資会社である場合
3. 投資先ファンドが"operating company"に該当する場合
4. プランが投資先ファンドに対して投資する割合が"significant"ではない場合

3.の"operating company"は、投資事業以外の事業を行うエンティティのほか、"venture capital operating company"(VCOC)と"real estate operating company"(REOC)を含みます。

VCOCは、大まかに言うと、以下の要件を満たすことが必要です。
(i)簿価ベースで資産の50%以上をベンチャーキャピタル投資(経営権を取得する投資)又はこれに付随する投資に充てていること、
(ii)通常の事業の過程において実際に1社以上につき経営権を行使すること。

REOCは、大まかに言うと、以下の要件を満たすことが必要です。
(i)簿価ベースで資産の50%以上を運用型又は開発型の不動産投資に充てていること、
(ii)通常の事業の過程において、運用又は開発に直接従事していること。

4.の"significant"な投資については、1以上のプランからの投資合計が投資先ファンドの25%未満であることが必要です。


細かいルールは、レギュレーションを見た方がわかりやすいと思うので、特にまとめません。

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前回の悩みに対する一応の解答です。

いろいろと検索した結果、このサイトを見つけました。これをベースに考えると、以下のとおりです。

受任者義務を具体的に定めるSection 404やSection 406は、"fiduciary"の義務を定めています。

そして、この"fiduciary"はSection 3(21)に定義されています。

Section 3(21)は、"plan assets"という語は使っていませんが、"its asset"や"moneys or other property"という語は出てきます。

"plan assets"は、これらの語句の内容を定めるものと理解すれば、条文として意味がとおります。この他に解釈の方法もなさそうなので、確証はないものの、これでOKではないかと思います。

まとめると、以下のようになります。
「Section 404やSection 406などの責任を負うのは"fiduciary"であるため、PEファンドは、これに該当しないよう、ファンドの資産が"plan assets"とならないようなアレンジを行う。」

何が"plan assets"にあたるかについては次回まとめます。


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PEファンドとしては、ERISAの規制を免れるため、ファンドの資産が"plan asset"に該当しないように配慮します。

"plan asset"の定義はSection 3(42)にあり、具体的な内容はレギュレーション(29 C.F.R. Section 2510.3-101)に定められています。

なんで、"plan asset"が問題になるかについて、条文をいろいろ見たのですが、いまひとつ確証は得られませんでした。

次回はその一応の解答をまとめますが、今回はその悩みの過程をまとめてみます。

まず、ERISAの適用対象である、
"employee walfare benefit plan"や"walfare plan"(Section 3(1))、
"employee pention benefit plan"や"pention plan"(Section 3(2))、
"employee benefit pnal"や"plan"(Section 3(3))
の定義に関連するのではないかと見てみても、"plan asset"なる語は使われていません。

というか、そもそも、定義を定めるSection 3では、"plan asset"の定義を定める(42)以外に"plan asset"は出てきません。

次に、ERISAの適用範囲を定めるSection 4を見ても、"plan asset"は出てきません。

さらに、受任者義務(Fiduciary Duty)の適用範囲を定めるSection 401を見ても、"plan asset"は出てきません。個別の条文であるSection 404やSection 406を見ても、"plan asset"は出てきません。


続きます。


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ERISAとは、Employee Retirement Income Security Actを表します。

年金ファンドなどからの出資を受ける場合には、このERISAが問題になり、多くのPEファンドの契約書には、ERISAに関する規定が入ってきます。

そこで、PEファンドとERISAの関係について整理してみます。

なお、ERISAはTitle 29の一部として制定されたため、Title 29におけるセクション番号と、ERISAとしてのセクション番号が食い違っています(詳しくはこちら)。左にもリンクのあるCornell University Law Schoolのサイトでは、Title 29のセクション番号が記載されていますが、以下ではERISAとしてのセクション番号で書いていきます。

ERISAは、年金ファンドなどにおける出資者保護を目的として、資産運用などについて厳格な制限を課しています。

主たるものとしては、受任者義務(Section 404)のほか、利害関係者(party in interests)との取引禁止があります(Section 406)。利害関係者の定義はSection 3(14)にあります。

利害関係者の定義は広く、ERISAの対象となるプラン(Plan)に参加する従業員の雇用主やその親会社、子会社、主要株主を含みます。そして、合理的な条件かどうかを問わず取引が禁止されるので、これに違反しないように注意するのはかなりの労力を伴います。

そこで、PEファンドはERISAが適用を受けないようなアレンジをします。


続きます。


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キャリード・インタレストとは何かについて、まとめてみます。

ファンドの運用成績がプラスだった場合、そのプラス分について、ファンド運営者はその一部(20%が多い)を優先的に受領できます。これをキャリードイン タレストといいます。

1.成功報酬?

キャリード・インタレストは、ときどき、成功報酬だと説明されていたりします。
これは、一部正しいですが、法律的には正確とはいえません。

確かに、キャリード・インタレストは、ファンドの儲けに応じてファンド運営者に支払われるもので、ファンド運営者に対する金銭的なインセンティブという意味では、成功報酬的な側面があります。広義の成功報酬と言えるかもしれません。

しかし、法的には、サービスに対する報酬ではなく、ファンド運営者の保有するファンド持分に対して支払われるファンド収益の分配です。

この点について、もう少し掘り下げます。

2.労務出資?

ファンドの持分に基づく分配とは何か。

ファンド運営者による労務出資があると考えれば、ファンド運営者に対して出資割合以上の分配をすることにも違和感はありません。

しかし、労務出資とは構成されません。

労務出資として構成することも出来なくはないですが、分配時におけるファンド運営者と投資家との利害調整は、キャリード・インタレストの支払い方 その1以降で検討したとおり、分配額の割合だけの問題ではありません。

そのため、ファンドの持分の性格そのものが違うものして構成されていると理解すべきと考えられます。

また、投資事業有限責任組合の場合、そもそも労務出資は認められていないため、労務出資として構成することは法律上不可能です。

わかりやすく言うと、配当について優先権のある株式のファンド持分版というイメージです。ファンド運営者は収益の一部が優先的に分配される優先持分を有し、投資家は収益の残りについて均等に分配される普通持分を有するといえます。

3.経済的合理性はあるか?

どうしてキャリード・インタレストのようなアレンジがなされるか。
出資金額に応じた分配がなされないのは不合理でしょうか。

キャリード・インタレストは、前述のとおり、ファンド運営者に対してインセンティブを与えるものです。キャリード・インタレストがあることによって、ファンド運営者の得る利益が、ファンドの投資成績の向上と直結します。したがって、ファンド運営者は真剣に投資成績の向上を追求するようになります。

このため、投資家は、ファンド運営者が優先的に利益の一部を得ることを許容しています。

4.税務上の取り扱い

上記2.のとおり、キャリード・インタレストの支払いは、ファンドによる利益の分配としての性質を持ちます。ファンド(組合を想定。)は、パススルー・エンティティですので、ファンドに譲渡所得が発生したときは、その譲渡所得はファンド運営者及び投資家のレベルで認識されます。

したがって、キャリード・インタレストは譲渡所得として課税されます。

5.譲渡所得としての課税は不公平?

キャリード・インタレストが譲渡所得として課税されることについては、批判的な意見も見受けられます。アメリカでは、譲渡所得として取り扱うのはやめようという提案がなんどもされています。

確かに、成功報酬と経済的にはそれほどかわらないといえます。また、実質的には投資運用サービスの対価であると言えなくもありません。

でも、これまで見てきたとおり、キャリード・インタレストとして構成することも、あまり不合理ではなさそうです。

日本の税法では、私法上の法形式が尊重されます。とりうる二つ方法のうち一つを、税金が安いという理由で選んだとしても、私法上きちんとしていれば、その法形式が読み替えられることはありません(というのが判例、裁判例の流れ。)。

なので、キャリード・インタレストを解釈によって譲渡所得ではないとするのは、難しいように思われます。

アメリカの場合、経済的実質を重視するのですが、やはり譲渡所得として取り扱われています。いろいろとアナロジーを使って説得的に構成できそうですが、研究不足のため割愛します。




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