Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2010年05月


2.在庫コスト

タイムリーに売るためには在庫を抱えておく必要があり、そのコストはビッド・アスク・スプレッドに反映されます。

在庫が減ってきた場合にはその減った分を調達する必要が生じるのですが、調達時には売値よりも高値でしか買えない自体になっている可能性もありますので、 このリスクはビッド・アスク・スプレッドに反映されます。

3.逆選択(adverse selection)


いろいろと前提がありますが、基本的には、情報を持っている人(インサイダーに限らず、きちんと企業価値を判断出来る人)と情報を持っていない人が取引すると、情報を持ている人が利益を上げ、情報を持っていない人が損失を被ることになります。

ディーラーは、情報を持っている人と取引する可能性にさらされていますので、その分の損失をどこかで取り返さなければなりません。これがビッド・アスク・スプレッドに反映されます。

すなわち、10%の確率で100ドルの損失を被ることが見込まれる場合、ビッド・アスク・スプレッドは各取引ごとに10ドル回収できるように設定されます。


このビッド・アスク・スプレッドの理解は、資本市場の設計にあたっていろいろなことを考えるベースとなります。いくつか後にまとめられるのではないかと思います。


弁護士的にどう活かしていくかという点ですが、金融庁や証券取引所に雇ってもらうほか、取引所関係の規制に関するややこしめな訴訟で主張を構築するのに役立つのではないかと思います。後者については、大 きな枠組を考える作業は好きなので、良いチャンスに巡り会えることを期待しています。

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ビッド・アスク・スプレッド(Bid/Ask Spread)の構成要素について、Capital Market Regukationの授業で学んだことを自分のノートがわりにまとめてみます。

ビッド・アスク・スプレッドとは、買値(Bid)と売値(Ask)の差を言います。取引をしようとすると、通常、買値が高く売値が安く設定されており、売りと買いを同時にやると、ビッド・アスク・スプレッド分だけ損をすることになります。

このビッド・アスク・スプレッドは、何によって決まるでしょうか。

ディーラー(前にまとめたとおり、ここでのディーラーはマーケットメイカーを想定しています。)間の競争が十分でなければ、需要と供給によって決まります。すなわち、投資家が売買する気がなくならないギリギリのところまで、ビッド・アスク・スプレッドは広がります。

それでは、ディーラー間の競争が十分なときは、どこまで値下がりしていくでしょうか。

ビッド・アスク・スプレッドには、以下のような構成要素があり、これがカバーされる範囲まで下がっていくと考えられます。

1.ディーラー業務の固定費

人件費、賃料、光熱費などの固定費を、ビッド・アスク・スプレッドから回収する必要があります。


すごく中途半端ですが、続きます。


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こっちにくる前には、ブローカー・ディーラー(broker-dealer)って何のこっちゃと思っていたのですが、なんとなくわかってきたのでまとめてみます。

結論を先にいうと、もともと”ようは証券会社のことだよね”と思っていたのは正解でした。

まず、ブローカーは、Exchange ActのSection 3(a)(4)に定義されていますが、簡単にいうと、顧客のために媒介、取次又は代理をする者というイメージです。これはわかりやすいのではないかと思います。

つぎに、ディーラーですが、Exchange ActのSection 3(a)(5)に定義されており、簡単にいうと、自己勘定で取引する者をいいます。

で、日本では証券会社がこの業務をやっているので、ざっくりいって、ブローカー・ディーラーとは日本の証券会社のようなものという理解でOKです。

ですが、日本の証券会社が行う引受やM&A仲介業務は、アメリカではインベストメント・バンクの枠になりますので、日本の証券会社がやっていること=ブローカー・ディーラーの業務というわけではない点には注意が必要です。

なお、Exchange Actのディーラーの定義は日本語でいうディーラーとだいたい同じイメージなのですが、「市場はディーラー・マーケットである」といった話をするときの”ディーラー”は少し意味合いが違います。日本語でいう、マー ケットメイカーと理解するのが一番近いのではないかと思います。

たぶん、ここでいう”ディーラー”は、指定マーケットメイカー(Designated Market Maker)を主として想定しているはずなので、マーケットメイカーと理解しておけば普通の取引所を想定する限り大丈夫そうです。

説明するのにもっと適任な方も多いと思いますが、どこかで誰かの役に立つと幸いです。


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では、インサイダー取引は認めても良いでしょうか。特にデメリットがなければ、インサイダー取引を認めることで市場の価格発見機能が促進すれば良いという ことにもなりそうです。

私は、いまのところ、コーポレート・ガバナンス上の理由からインサイダー取引は必要だろうと考えます。

すなわち、取締役がインサイダー取引によって儲けることができると、そっちの方向にインセンティブが働いてしまい、株主が取締役報酬などでインセンティブを 与えようとしても、それが歪められる結果となってしまいます。

取締役の報酬について、長期的な利益を追求するような設計にしようとか、高 額すぎるから制限しようとか、1億円以上の場合には開示しろとか、そういう話は全部無駄になります。

なので、インサイダー取引規制は必要だろうというのが、現時点で考えるところです。

これは、結局のところアメリカの判例法とそんなに変わりません。アメリカの判例法も禁止の範囲を広げるのに無理をしてるなぁと思っていたのですが、本質を良く考えてみると結構よさげです。

と、ここまで考えて満足して、少しググってみたところ、少し違うものの、藤田友敬先生が10年以上前に同じような方向で精緻に論じておられました(「内部者取引規制」大蔵省財政金融研究所「フィナンシャル・レビュー」March-1999)。


考えた結果が外れてないということは嬉しいですが、10年以上前に論じられていたこと(&これまでの実務でそこまでたどり着いていなかったこと)を考えると、複雑な心境です。


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インサイダー取引を禁止する理由は何か、ということは永遠のテーマみたいに議論され続けています。いろいろと立場はあるのでしょうが、自分なりに考えたことをまとめてみます。

もともと、インサイダー取引を禁止する理由は、市場の信頼という点にあるだろうと理解していました。

すなわち、会社の取締役が会社の情報に基づいて儲けていたら投資家(及びディーラー)はバカバカしくて投資したくなくなり、その結果、流動性が低下し、市場の魅力が低下し、さらに流動性が低下し、、、、というからくりです。

(情報を持っていない人が情報を持っている人と取引をすると損をする結果になります。インサイダー取引が許されているということは、情報を持っている人が市場にいるということになり、取引によって損をする可能性が高いと予想される結果となります。「バカバカしくて」というのは、気持ちの問題の他にこういった点もあります。)

ですが、トレーディングの技術が上がってきており、会社の発表する情報が価格に織り込まれるスピードはどんどん上がってきています。

そうすると、情報で儲けようとしているトレーダー以外の投資家(機関投資家も含みます。)からすると、どこかで誰かが情報を持って儲けているけれども、自分は同じように儲けられない(むしろ相手方になった場合に損をする)、ということになります。

なので、インサイダー取引が投資家に「バカバカしくて投資したくない」と思わせる、というのは必ずしも決定的な理由にはならなそうです。


続きます。


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