Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
Biz Law Hack本館はこちら。http://bizlaw.ldblog.jp/

2011年03月

持分所有者要件としては、以下の2つを満たす必要があります。
  • 100名以上の持分保有者がいること(Section 856(a)(5))
  • 同族会社(Closely held entity)でないこと(Section 856(a)(6)、(h))

これらのテストは、どちらもREITの初年度には適用されません(Section 856(h)(2))。

1.100名以上要件

課税年度のうち335日間(会計年度が1年未満の場合には日割り。Section 856(b))、REIT持分保有者が100名以上である必要があります。

この計算にあたっては、みなし保有のルール(rule of attribution)は適用されません(Treas. Reg. Section 1.856(d)(2))。

2.非同族会社要件

同族会社要件は、Section 542(a)(2)により判定されます。

各課税年度の後半に、5名以下の個人が直接又は間接にREITの持分価値の50%超を保有している場合には、同族会社に該当します。

細かい計算ルールは、Section 856(h)や関連するTreasury Regulations参照。

3.超過持分規定

同族会社要件の適用を避けるため、定款又は信託約款に超過持分規定(“excess share” provision)が規定されていることがあります。

これは、所定の持分割合を超えてREIT持分を取得しようとする者がいる場合、その超過部分については定款又は信託約款に定める者に自動的に移転されるという規定です。この持分割合は9.8%とされるのが一般的のようです。

この規定の有効性も問題になりえますが、IRSは有効性を認めてきています。

なお、この規定は、関連者賃借人(related party tenant)の発生を防ぎ「不動産からの賃料」(rents from real property)該当性を確保する役割や、買収防衛策としての役割も果たします。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

1.総論

REITの定義は内国歳入法Section 856に規定されています。

これによれば、REITに該当するためには以下の要件を満たす法人、信託又は団体(association)であることが必要とされます。なお、カッコ内はSection 856の該当するParagraphです。
  • 1人以上の取締役または受託者によって運営されていること((a)(1))
  • 持分は譲渡可能であること((a)(2))
  • REITのルールを除き、法人課税の対象となりうること((a)(3))
  • 保険会社または銀行に分類されないこと((a)(4))
  • 持分所有者要件を満たすこと((a)(5)、(a)(6))
  • REITとしての取り扱いを受けることを選択していること((a)(7)、(c)(1))
  • 収入要件を満たすこと((a)(7)、(c)(2)、(c)(3)、(c)(6))
  • 資産要件を満たすこと((a)(7)、(c)(4)、(c)(5)、(c)(7))
また、REITとしての課税上の取り扱いを受けるためには、Section 857の要件も満たす必要があります。

Section 857は、以下を求めています。なお、カッコ内はSection 856の該当するParagraphです。l
  • 配当要件を満たすこと((a)(1))
  • REITとなった最初の年度末に、REITになる前のearnings and profitが存在しないこと((a)(2))
このほか、Section 859は、暦年を会計年度とすることを求めています。

2.譲渡可能性

持分は譲渡可能であることが必要とされていますが、持分所有者要件に悪影響を及ぼすような譲渡を制限することは許容されています(Treas. Reg. Section 1.856(d)(2))。

3.選択及び課税年度について

REITとして取り扱われるためには、そのことを選択する必要がありますが、その選択はForm 1120-REITによって最初の会計年度の税金を計算して報告することによって行います。

この選択は次年度以降も効力を有し、Section 856(g)に従った資格喪失又は撤回があった場合に効力を失います。
    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

1.REITとは何か

REITとは、Real Estate Investment Trustの略で、日本語では不動産投資信託と言われたりします。もっとも日本のREITは投資法人ですが(法人税法67条の15)。

REITの要件については内国歳入法で定められており、アメリカ法的にはこの要件を満たすものを一般的にREITと呼びます。Real Estate Investment "Trust"と呼ばれていますが必ずしも信託形態である必要はありません。

2.法的形態

法人形態のものとビジネス・トラスト形態のものがあります。

法人形態の場合には州の会社法が適用されるので、コーポレート・ガバナンスなどはこれに従うこととなります。また、有限責任のメリットもあります。

ビジネス・トラスト形態の場合には、コーポレート・ガバナンスの面で柔軟性が認められます。また、州の税金の観点で有利な場合があるようです。ただし、法人形態と比べて法的な不確実性が高く、有限責任については必ずしも明確ではありません。

3.課税

あとで詳しくまとめますが、REITに対しては、日本と同様にペイスルー型の課税がなされます。
投資家については、基本的に法人に対する持分と同じような課税がされます。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

ファンド投資家が有限責任のメリットを享受できるファンドとしては、日本では投資事業有限責任組合、海外ではリミテッド・パートナーシップがあります。

これらのエンティティでは、投資家は有限責任のメリットを享受できますが、ファンドの運営者は無限責任を負う必要があります。

そのため、ファンド投資家はファンド運営者と区別が重要になりますが、大雑把にいうと、ファンド投資家は有限責任のメリットを享受するためには受動的である必要があります。

投資事業有限責任組合契約に関する法律9条3項では、「有限責任組合員に組合の業務を執行する権限を有する組合員であると誤認させるような行為があった場合」には、「その誤認に基づき組合と取引をした者に対し」、無限責任になると定めています。

また、Delaware Code TITLE 6のSection 17-303では、リミテッド・パートナーが「事業の支配に参加した(participate in the control of the business)」場合には、「リミテッド・パートナーの行為を基に、リミテッド・パートナーがジェネラル・パートナーであると合理的に信じた取引相手方に対してのみ(persons who transact business with the limited partnership reasonably believing, based upon the limited partner's conduct, that the limited partner is a general partner.)」、無限責任になると定めています。

こうして比べてみると、デラウエア州法のほうが取引相手方にとって少し厳しい(無限責任になる場合が限られている)ようです。

文言だけの比較ですが、具体的には以下の3点が異なります。
  • デラウエア州法では事業の支配への参加が必要だが、日本法では「誤認させるような行為」だけでよい。
  • デラウエア州法では”行為”と”誤認”の因果関係が必要なことは明らかだが、日本法では必ずしも明らかではない。
  • デラウエア州法では"誤認"が合理的であることが求められているが、日本法では明示していない。
解釈まで考えていくと別の議論もできそうですが、少なくとも日本では判例の蓄積がないので、無限責任になってしまうリスクについて少し慎重に考えたほうがよいと思われます。

特に、海外主体で作ったファンドの日本化を行う際には、アグレッシブな条項が入っていないか注意が必要です。


なお、経産省による整理はこちら。裁判所の判断はこれに拘束されるものではありませんが、一応の指針としては押さえておいたほうが良いと思います。

    このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

7.課税上の取扱い

課税上の取扱いの前提として、ETN保有者の状態をおさらいすると、以下のとおりです。
  1. 満期に基礎指数の応じて計算された金銭を受領する契約上の地位を有する
  2. 期中は利子・配当など何も受け取らない
  3. 裏づけ資産に対する持分は持たない
  4. 3.の結果、参照指数に関連して発生する配当、利子などに対する持分もない
ETNの課税上の取り扱いについて内国歳入庁は立場を明らかにしていませんが、実務上、プリペイド・フォワード(prepaid forward)として扱われています。

プリペイド・フォワードというのは、AがBに最初に決まった額の金銭を支払い、所定の期間経過後にBがAに対して指数に連動した額の金銭を支払うという取引です。

かえってわかりにくいかもしれませんが、小豆の先渡取引の、(i)小豆の代わりに指数に連動した額の金銭を交付する、(ii)売買代金を売買期日ではなく約定時に支払う、という取引です。

保有者は、譲渡、償還または満期のタイミングで、受領した金額と簿価(basis)の差額に等しい金額だけ、譲渡所得又は譲渡損失をを認識すべきことになります。

ただし、将来の課税上の取り扱いが変更される可能性があるので注意が必要です。

この点については、本当に売買なのか?という実体と形式の問題があって、課税的にはとても興味深い論点があるのですが、本旨に外れるので別途機会があればまとめます。

このページのトップヘ