Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2011年03月

4.ETNと証券法

ETNは有価証券に該当するので、公募するには、証券法に基づき登録を完了する必要があります。

ETNは、基本的に金融機関が発行するため、WKSI(Well-Known Seasoned Issuer。定義はRule 405)による自動発行登録(automatic shelf registration)として公募されることが一般的です。

5.ETNと投資会社法

ETNの発行者は、投資会社には該当せず、投資会社法上の規制を受けません。

したがって、ETNの発行者は、投資会社法の救済措置を必要としません。

6.ETNと取引所法

ETNについては、取引所法が適用されます。そのため、ETFと同様に(ETFについてはこちら→)、レギュレーションMのRule 101と102、Section 11(d)(1)、Rule 11d1-2について救済措置を取得する必要があります(こちらこちらを参照)。

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1.ETNとは何か

ETN(Exchange Traded Note)が何かについては、前に簡単にまとめました(こちら)。

ようは、裏づけ資産のない指数連動の上場債券です。ファンドではありません。

少し法律的にいうと、ETNは、長期の満期(maturity)であり、その満期には、ETNの元本額相当額に指数要素(index factor)を乗じて適用ある手数料を控除した額が保有者に対して現金で支払われるというものです。指数要素は、「当該日の関連指数の終値の当初価格設定日の終値に対するの比率」とされることが典型的です。

そして、満期までの間は取引所(又は店頭)で取引されます(期中償還も可能です)。

2.発行と償還

ETNの発行者は、当初に一定量発行し、また必要に応じて随時追加発行を行います。

この発行にあたっては、必要量以上のETNを発行し在庫として保有しておき、必要に応じて販売を行うというのが一般的のようです。

そして、原則として少なくとも週に1回、償還が可能とされます。

ETFにおける解約ユニットのように、一定量のまとまりで償還することが必要とされており、ブローカ-・ディーラーその他の金融機関がETNを集めるサービスを提供している場合があります。

3.裁定取引の機会とETN価格の透明性(Transparency)

ETNの現在価値(基礎指数に連動)と取引価格との間に乖離が生じた場合、裁定取引の機会が生じます。

すなわち、ETNが基礎指数と比べて安値で取引されていれば、ETN買い・基礎指数売りで利益がでます。逆にETNが基礎指数と比べて高値で取引されていれば、ETN売り・基礎指数買いで利益が出ます(ETFについて少し詳しく書きました→こちら)。

この裁定取引には、ETNの流通市場における価格透明性が必要不可欠であり、ETNの参考指標(indicative value)の開示が取引所によって義務付けられています。


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3.ファンド運営者に売る

ファンド運営者(又はその関連者)が責任を持って引き取るというのも選択肢として挙げられます。

ただし、承継ファンドに売る場合以上に利益相反が問題になりますので、価格決定の公正さを担保する方法は不可欠といえます。

4.ファンドの期間を延長する

契約書にはファンドの存続期間が定められていますが、これを延長して市場の回復を待つという選択肢があります。

ただし、投資家側に規制法や投資方針上の制約があるなどして、ファンドの存続期間の延長は許容できない場合が少なくありません。

5.清算用のエンティティを用意する

ファンド自体は終了したとしても、一定期間資産を保有するエンティティを用意し、資産が処分できた後に代金を構成員に分配するという方法もあります。

ファンドの期間延長の際に問題となる規制法や投資方針上の制約は、この場合にも問題となりますが、この方法によって避けられる場合もありますので、選択肢に入れておいたほうがよいことも多いと思われます。

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ファンドが投資資金を回収して元本・利益を投資家に分配するためには、資産を処分して現金化することが必要となります。ファンドには存続期間がありますので、一定期間内に必ず処分をしないといけないのですが、市場の状況によっては換金が困難になることがあります。とくに流動性の低い資産に投資するファンドにとっては、この問題は深刻だろうと思います。

この際にとりうる方法はいくつかありますが、契約書の作成段階において、ファンド運営者などのような選択肢と裁量を与えるかを検討しておく必要があります。

1.現物で分配する

これについては別途まとめましたが、いろいろと難しい問題があります。

2.承継ファンドに売る

ひとつのファンドが終了する際には、ファンド運営者は新たにファンドを組成します(そうしないと仕事がなくなるから。)。

そこで、資産の処分先として、新たに組成されるファンドが候補に上がってきます。

ただし、既存ファンドと承継ファンドの投資家はかならずしも一致しませんので、利益相反の問題が生じやすいといえます。譲渡代金が高ければ承継ファンドの投資家は損をしますし、譲渡代金が安ければ既存ファンドの投資家が損をします。

とはいえ、買い手のひとつとしては有力な候補になるのは間違いないので、譲渡を一切禁じるのではなく、譲渡代金の公正さを担保できるような仕組みを作ったうえで譲渡を認めるというのが望ましいと考えられます。

譲渡代金の公正さの担保する方法としては、アドバイザリー・ボードの関与が考えられます。また、市場性のある有価証券(marketable security)などは、あらかじめ価格決定方法を決めておくことも考えられます。

なお、文脈は違うものの承継ファンドについてはこちらこちらも参照。

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漢字ばっかりのタイトルになってしまいました。

適格機関投資家の定義は、金商法2条3項1号、定義府令10条に規定があります。

この中で、定義府令10条1項18号は投資事業有限責任組合自体が適格機関投資家に該当するとしています。

このブログの愛読者(もしいれば。)は、これに少し違和感を覚えるのではないかと思います。

日本法では、投資法人を除くファンド全般について、基本的に社会実体がないことを前提としています。ファンド持分の発行者はファンド自体ではなくファンド運営者とされていたり、業規制などもファンド運営者に対するものとして規制されていたりします。

これは投資事業有限責任組合でも同様です。持分発行者は無限責任組合員とされています。また業規制の対象も無限責任組合員です。

なのに、定義府令10条1項18号は投資事業有限責任組合自体が適格機関投資家に該当するとしています。ちょっと不思議です。

これは他の形態の組合型ファンドに関する規定とも一貫しません。これらのファンドについてはファンド運営者に着目して適格機関投資家該当性が判断されます。法人の場合は23号、個人の場合は24号です。

スジ的には、投資事業有限責任組合についても「投資事業有限責任組合の無限責任組合員(投資事業有限責任組合の無限責任組合員として取引を行う場合に限る。)」などとすべきような気がします。

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