Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2011年03月

4.追加クロージングの制限

追加クロージングは、既存のファンド構成員にとって不利な面があります。

たとえば、新規の投資家はファンドの初期投資成績を見てからの投資判断となるため、既存投資家の投資にただ乗りができてしまいます。すなわち、既存投資家のリスクにより投資された初期の投資案件で得られた利益について、新規の投資家がただ乗りでいてしまいます。

また、ファンドの持分割合が希釈化するため、ファンドに対する影響力も相対的に下がることとなります。

そのため、追加クロージングについては、時期と金額について制限が課されることが一般的です。

なお、追加クロージングの時期の制限は、ファンド運営者のリソースを投資活動に集中させる意味でも契約書に規定しておくことが望ましいといえます。

5.追加出資権

既存投資家に対して、新規投資家加入の際に自己の出資約束金額の増額を求める権利が与えられることがあります。

これにより、投資家はファンドに対する出資比率を維持することが可能です。

この追加出資権が使われる場合としては、以下が考えられます。
  • 規制法や投資方針などで出資比率が一定割合以上でなければならないと定められている場合
  • 規制法や投資方針などで出資比率が一定割合以下でなければならないと定められているために出資約束金額が抑えられていたが、金額的にはもっと投資したいと考えている場合

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PEファンドを組成するにあたっては、投資家が十分集まった段階でクロージングへと進みます。

1.クロージング手続き

クロージングでは以下のようなことが行われます(厳密にはクロージングでないものも入っていますが)。
  • ファンド運営者及び各投資家により、契約書その他必要書類にサインがなされる
  • ファンドの運営が開始される
  • 管理報酬とファンド費用のためのキャピタル・コールがなされる
  • すでに投資案件があれば、それについてもキャピタル・コールがなされる
  • ファンドの構成員によりキャピタル・コールに応じた出資がなされる
2.複数のクロージング

ファンドの組成する際には、一定の規模を目標として投資家が勧誘されますが、この目標には一定のレンジがあることが通常だと思います。

目標規模の上限まで投資家が集まった場合にはクロージングは1回だけで終わりですが、目標規模の下限程度までしか投資家が集まらなかった場合には、複数回クロージングを行うことがあります。

後者の場合、必要最低限の投資家でファンドを一度立ち上げておいて、事後的に投資家をファンドに追加していくことになります。

3.新規投資家の取扱い

契約書次第でいろいろなアレンジがありえますが、PEファンドの場合、持分の時価評価が困難なため、新規投資家は、あたかも当初からファンドに投資していたかのように取扱われるとするのが一般的ではないかと思います。

まず、出資については、新規投資家は、既存投資家と新規投資家とが出資約束金額ベースでプロラタになるように計算された金額プラス利子を出資します。そして、ファンドは出資を受けた金銭を既存投資家にプロラタで返却します。

たとえば、既存投資家の出資約束金額が40億円、既出資が10億円のところに、出資約束金額10億円の新規投資家が加わったとします。この場合、新規投資家は2億円(10億円の1/5)プラス利子を出資することになり、その出資された2億円プラス利子は既存投資家に返却されます。

管理報酬についても、当初からファンドに参加していたものとして支払われるのが一般的ではないかと思います。

別の方法として、新規投資化は既存の投資には参加できないとアレンジされたり、既存投資の含み益部分についてはプレミアムを乗せて払い込みを行うとアレンジされたりというのもありえますが、実務上の手間などもあるので、メジャーではないと思います。


続きます。
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ファンドの会社型・契約型について前に少しまとめましたが、有価証券の発行規制と業規制についても会社型・契約型の違いが出ているのでその点について。

細かい点を考えていくと収拾がつかなくなるので、今回はいつにもましてざっくりとした話です。正確さにかける点もあるかもしれませんが、イメージとして捉えてください。

会社型の場合、ファンド自体が活動主体として認識されるため、ファンドが発行者となり、業規制の適用も受けます。 

これに対し、契約型の場合、ファンド自体ではなく、その関連当事者が発行者となり、業規制の適用も受けます。

アメリカ法では、ファンドは会社型とされていますので、以下のように扱われます。
  • ファンド自体が有価証券の発行者
  • ファンド自体が業規制の対象
日本の委託者指図型投資信託は契約型として、以下のように扱われます。
  • 投資信託委託会社が発行者
  • 投資信託委託会社が業規制の対象
日本の組合型ファンドも契約型として、以下のように扱われます。
  • ファンド運営者が発行者
  • ファンド運営者が業規制の対象
委託者非指図型投資信託も契約型として、以下のように扱われます。
  • 受託者が発行者
  • 受託者が業規制の対象
投資法人は会社型と考えられていますが、少し変わっています。
  • 投資法人自体が発行者(会社型)
  • 投資法人自体が一応業規制の対象(会社型)
  • 資産運用会社も業規制の対象(契約型)
投資法人は資産運用会社への資産の運用に係る業務の委託が義務付けられており(投信法198条)、しかも資産運用会社は金商業者として規制を受けますので、業法的には契約型としての色彩が強いのではないかと思います。

投資法人は会社型と考えるのが一般的かもしれませんが、実態としてはガバナンスの多少効いた契約型と考えたほうがよさそうな気もします。

法人型にしたいのならそれなりに筋を通せばよかったのに、投資信託との整合性とかで中途半端になっちゃんたんじゃないかと思います(完全な想像)。現行の制度では投資法人の登録が本当に必要なのかよくわかりません。


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3.金商法2条2項5号と6号は組合型ファンドに限らない

組合型以外のファンドが金商法2条2項5号と6号の要件を満たすことがある、というのはあまり意識されていないのではないかと思います。

確かに、金商法2条2項5号は、典型的には組合型のファンドを想定した規定であり、組合に関する法律がいろいろ列挙してあります。

しかし、金商法2条2項5号には、その後ろに「社団法人の社員権その他の権利」とはっきり書いてあります。なので、組合型ファンドに限られません。

金商法2条2項5号に該当するためには、組合型かどうかは重要ではなく、(i)金商法2条1項または2条2項(5号を除く)に該当しない権利であること、(ii)出資対象事業から収益の配当または財産の分配を受ける権利であること、という要件を満たすかどうかが重要です。

たとえば、株券が金商法2条2項5号の適用外なのは、”株式会社は組合ではない”ということではなく、株券が金商法2条1項9号に規定され、(i)を満たさないからです。

投資信託の受益証券が金商法2条2項5号の適用外なのは、”投資信託は組合ではない”ということではなく、投資信託の受益証券が金商法2条1項11号に規定され、(i)を満たさないからです。

4.蛇足

こういう点はまじめに条文を読めばわかることですが、慣れてくると危ういかもしれませんので注意が必要です。

会議中に若手弁護士が条文を参照しているのは、こういう点を確認している可能性があります(やってない若手は確認しましょう。)。そして、多くの場合は安心して終わりなので、その点に関して何も言いません。

クライアントなどからは”イロハのイも知らないで”というように見えるかもしれませんが、条文とか基本書とかを毎回きちんと見ておくのは必要な作業だと思います。分かった気になっていると大きな間違いが起きる可能性があります。

何でも知っている顔をしている”大先生”が好きな人もそれなりにいるのですが、基本から積み上げてきちんと仕事をする点を評価してもらえるようになるといいですね。
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1.広義の集団投資スキーム

集団投資スキームって何でしょうか。結構いろんな意味で使われているのではないかと思います。

これは、英語のcollective investment schemeの和訳だと思いますが、Wikipediaでみたら以下のように書いてありました。

A collective investment scheme is a way of investing money with others to participate in a wider range of investments than feasible for most individual investors, and to share the costs and benefits of doing so

要するに、多くの人から資金を集めてまとめて運用することで、一般個人投資家の出資ではできないような投資を実現するスキームのことを言います。

これが広義の集団投資スキームです。

法的形式は問いません。組合型のファンドのほか、投資信託も代表的なものとして含まれます。また、株式会社であっても含まれます。

2.狭義の集団投資スキーム

広義の集団投資スキームが自然な意味だと思うのですが、集団投資スキームには狭義の意味で使われることも多そうです。

これには大きく3パターンに分けられるのではないかと思います。

パターン1-1:条文を重視するもの

金商法2条2項5号と6号の要件を満たすものを集団投資スキームと呼びます。

株式会社や投資信託など広義の集団投資スキーム該当するエンティティであっても、その持分が証券取引法下で有価証券として扱われていたものはこれに含まれません。

パターン1-2:条文を重視する(ただし除外規定は無視)するもの

基本的にパターン1-1と同じですが、金商法2条2項5号各号に該当する結果として持分が有価証券とみなされない場合にも集団投資スキームと呼びます。

この立場では、たとえば、「出資者の全員が出資対象事業に関与する」ファンドは、”集団投資スキームであるものの除外規定によりその持分は有価証券とみなされない”ということになります。

パターン2:組合型を重視するもの

組合型のファンドを集団投資スキームと呼びます。

パターン1と想定するところはほぼ同じです。株式会社や投資信託など、その持分が証券取引法下でも有価証券として扱われていたものはこれに含まれません。

ただし、金商法2条2項5号と6号の要件を満たさない組合型ファンドもこれに含まれます。したがって、たとえば、出資対象事業からの収益の配当または財産の分配を受ける権利がないものであっても、組合型ファンドでさえあればこれに含まれます。

逆に、組合型以外のファンドは、金商法2条2項5号と6号の要件を満たしたとしても、これに含まれません。

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