Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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2011年04月

4.いくつかの問題点

(1)割合の問題

ファンドが行うある投資について、一部のファンド構成員が参加しない場合がありますが、この場合、出資未履行金額の残割合が投資家ごとに異なることとなります。

上記の例で言うと、投資案件1に必要な3億円はすべてAの出資でまかなわれたとします。この場合、投資案件1の後には出資未履行金額は以下のようになります。

 A:出資未履行金額 2億8800万円
 B:出資未履行金額 3億9200万円

投資案件2もファンドの初年度中(=2年目の管理報酬未発生)に生じた場合、どのような割合で出資がなされるべきでしょうか。
  • 出資未履行金額の残額割合に応じて
  • 出資約束金額の割合に応じて
あとで困らないように契約書できっちり決めておく必要があります。

(2)使わなかった資金をどうするか

キャピタルコールしてしまったものの、使わなかった資金をどうするかも契約書で決めておく必要があります。

キャピタルコール方式を選ぶ理由からすると、あまった資金はファンド構成員に返却したほうがよさそうですが、返金するにもコストがかかるので、安全な運用をするという選択肢もあります。

契約書に一つの方法を決めてしまうと後の柔軟性を奪ってしまうので、いくつか選択肢を列挙してファンド運営者が決めるというアレンジも可能です。

(3)キャピタルコールのための通知内容

キャピタルコールのための支払通知に出資を求める金額と期限が記載されるのは当然ですが、そのほかに何を記載すべきかについて契約書で定める必要があります。

ファンド構成員としては資金使途についても知りたいところですが、タイミング的に公表できない場合もありえるので、ある程度の柔軟さを残しておくと後で困らないと思います。


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2.用語の説明

ファンド運営者がファンド構成員に対して出資を求める行為を「キャピタルコール」といいます。キャピタルコールのための通知を「支払通知」といったりします。

各構成員のファンドに対する出資金額の上限は、「出資約束金額」といいます。「キャピタルコミットメント」と言ったりもします。

キャピタルコールに応じて出資された金額(=出資済みの金額)を「出資履行金額」といいます。英語だとCapital Contributionsなのですが、「キャピタルコントリビューション」というのを聞いたことはありません。

出資約束金額から出資履行金額を引いた額が、ファンド構成員が出資すべき義務の残額ですが、これを「出資未履行金額」といいます。

3.具体的に説明

以下の投資家がいるとします。

 A:出資約束金額 6億円
 B:出資約束金額 4億円

管理報酬(出資約束金額の年2%と仮定)が前払いの場合、ファンド組成時に管理報酬として2000万円が発生するので、Aに対して1200万円、Bに対して800万円のキャピタルコールが行われます。以後同じです。

投資案件1の実行に3億円必要となった場合、Aに対して1億8000万円、Bに対して1億2000万円のキャピタルコールが行われます。

7億円が必要となる投資案件があった場合、出資未履行金額(10億円-2000万円-3億円)を超えますので、借り入れその他の手段がない場合には(←契約次第)投資できません。出資約束金額を超えるキャピタルコールはできません。

投資案件2の実行に4億円必要となった場合、Aに対して2億4000万円、Bに対して1億6000万円のキャピタルコールが行われます。


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あえて説明する必要もないかもしれませんが、一応キャピタルコール方式について説明してみます。

1.一般的な説明

投資ファンドに参加するためには出資を約束する必要がありますが、その出資のタイミングには3種類あります。
  1. ファンドに参加する時点で全額を出資する。
  2. あらかじめ決まったスケジュールで分割して出資する。
  3. ファンド運営者から求められた段階で求められた金額を出資する。
3番目の方法をキャピタルコール方式と言います。

これは資金の無駄な滞留を防ぐことを目的としています。

PEファンドなどは、ファンドの組成後に何年かかけて投資対象を選定していくのが通常だと思いますが、投資対象が決まっていない段階で出資を受けてしまっても、ファンド運営者は投資対象が決まるまで現金のまま保管しておかなければなりません。

キャピタルコール方式は、必要なときに必要な金額の出資を受けることができるので、このような無駄な資金の滞留がありません。

さらに、内部収益率(IRR)は出資された後からの計算になるという点も、ファンド運営者がキャピタルコール方式を好む理由の一つといえます。


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REIT持分は有価証券に該当しますので、その公募は証券法の適用を受け、流通市場での取引は取引所法の適用を受けます。

REITが使うべきregistration statementの様式は、Form S-11です。

REIT持分の公募にあたっては、ロールアップ・ルール(roll-up rule)について留意が必要です。

ロールアップ・ルールは、Regulation S-KのItem 901以下に規定されており、ロールアップ取引(roll-up transaction)に該当する場合には開示義務に関して追加的な義務が課されることとなります。

ロールアップ取引の定義はItem 901(c)にあり、1以上の組合の結合(combination)又は再編成(reorganization)を直接又は間接に伴う取引であって、当該組合の一部又はすべての投資家が新しい有価証券又は他のエンティティの有価証券を取得することとなるものがこれに該当します。

この例外は(c)(2)に定められており、証券法の登録が不要な取引であれば、ロールアップ取引からは除外されます。

そこで、UPREITの組成などで運用組合の持分発行とREIT持分の公募がなされる場合、前者と後者が別の取引であると構成できるかが問題となります。

別の取引として構成できれば、前者は(c)(2)によりロールアップ取引から除外され、後者は組合の結合又は再編成を伴わない取引と見ることができます。

両者が一体として取り扱われるかどうかは、募集の通算(integration)の問題となります。

証券法の問題なので深入りはしませんが、証券法Rule 152にセーフハーバー・ルールがあり、これが使えない場合は「5要素基準」をベースとして通算の要否を判断します。

Rule 152については、Black Box, Inc.に対する1990年のノーアクションレター、Verticom, Inc.に対する1986年のノーアクションレターが有名です。

「5要素基準」は、証券法のリリース(Securities Act Release No.4434)に記載され、今ではRule 502の注に含まれています。この「5要素基準」の下で、別の取引とされるのはかなり厳しいと考えられています。

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3.ダウンリート(DownREIT)

アップリートはREITがひとつの運営組合を通じて不動産を保有する形態であるのに対して、ダウンリートはREITが物件の直接保有と運営組合を通じた間接保有が混在する形態のものをいいます。

ダウンリートのでき方ですが、既存REITと含み益を有する不動産の保有所有者がいて、不動産保有者は運営組合に対して資産を現物出資し、既存REITは金銭を出資して組合持分を取得することにより出来上がります。

そして、アップリートと同様に、運営組合の持分は、運営組合又はREITの裁量により、REIT持分又は現金に転換されるという合意がなされます(アップリートと異なり、1対1の比率とはなりません)。

これは、既存REITがアップリートと対抗するために編み出したもののようです。

すなわち、アップリートは物件買収の際にも不動産保有者に課税繰り延べのメリットを与えることができるのですが、既存REITがDownREITスキームを使うことによって、不動産保有者に対して課税繰り延べのメリットを与えることができます。

課税繰り延べのメリットがなぜ生じるかについては、アップリートと同じです。運営組合の持分をREIT持分又は金銭に転換するときに譲渡益が認識されます。


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