PEファンド運営者の従業員にやる気を出してもらうためには、業績に連動する報酬を与えることが大事です。

ファンドの成績が上がれば報酬も上がるという仕組みにしておけば、従業員はがんばって働いてくれるはずです。

そのような報酬の制度設計としては、業績連動の給与というのがまず考えられます。また、ファンド運営者が株式会社形態であれば新株予約権を使うことなども考えられます。

しかし、従業員がファンドに投資できればより直接的ですし、税金との関係でも有利な取り扱いがありえます。

そこで、従業員がファンドに投資することが第一選択肢となりますが、やや問題があります。

(1)日本の場合

適格機関投資家等特例業務としてファンドの運営を行っている場合、適格機関投資家以外の投資家の数には制限があります。

そのため、(i)もともと適格機関投資家以外の投資家の数が多いファンド、及び/又は(ii)従業員の数が多いファンドの場合、適格機関投資家等特例業務の要件を満たさなくなってしまう可能性があります。

そうすると、金融商品取引業者としての登録が必要となり、各種業規制を遵守する必要が出てきてしまいます。

これを避けるためにはどうするかを検討する必要がありますが、いろいろと状況に応じてのことなので、ここでは省略。

(2)アメリカの場合

PEファンドなどは、投資会社法上の投資会社に該当しないように、適格購入者(qualified purchasers)ではない投資家の人数を気にするのが通常です。日本と同じような状況にあります。

詳しくは、以前のエントリを参照。
投資家の人数計算@アメリカ その1
投資家の人数計算@アメリカ その2
投資家の人数計算@アメリカ その3

しかし、インセンティブ・プランに関して日本とは大きな違いがあります。それは明示的例外規定の存在です。

ファンド運営者の従業員がファンドに対して投資する場合には、投資会社法Section 2a(13)のEmployees' securities companyに該当するようにファンドを設計して、投資会社に該当することを避けることができます。

employees' securities companyについては、Section 2(a)(13)に定義があります。

これによると、employees' securities companyとは、 投資会社又はこれに類似する発行者であって、その発行済みの有価証券(ショートタームペーパーを除く。)が以下のいずれか者によって受益的に保有されているものをいいます。
  • 単一のまたは関連会社の関係にある2以上の雇用者の被用者(employees or persons on retainer)だけ
  • かかる1以上の雇用者の元被用者だけ
  • かかる被用者の直接の親族(members of the immediate family)だけ
  • 上記カテゴリのいずれかに該当する者だけ
  • 雇用者と上記カテゴリのいずれかに該当する者だけ
このemployees' securities companyに該当すると、Section 3の投資会社に該当はしますが、申請することにより投資会社法の規制を免れることができます(Section 6(b))。