2.誰がキーパーソンか

まず、誰がキーパーソンかを定める必要があります。

目利きをする人は、基本的に余人をもって代えがたい性格のものなので、この人がキーパーソンであることはそんなに難しくありません。

ハンズオン担当者の場合は少し微妙です。

余人をもって代えがたいほどの活躍をする人というのはそんなに多くありません。ある程度の分散投資がされるのであれば、重要な役割を果たすハンズオン担当者も複数いるはずです。

このハンズオン担当者全員をキーパーソンとしてしまうと、やや厳しすぎるきらいがあります。

たとえば、重要な人が5人いる場合に、そのうち1人が何らかの 理由で辞めることはそんなに稀なことでもありません。また、1人辞めても残りの4人でカバーできることも多いと思われます。

そのため、以下のようなアレンジがされることがあります。
  • 余人をもって代えがたい人を1st Tierのキーパーソンとする。
  • 複数のハンズオン担当者を2nd Tierのキーパーソンとする。
  • 1st Tierのキーパーソンの辞任は、直ちにキーパーソン条項のトリガーになるとする。
  • 2nd Tierのキーパーソンの辞任は、一定割合を超えた場合にのみキーパーソン条項のトリガーになるとする。

3.キーパーソン条項トリガーの効果(PEファンドの場合)

投資家としては、キーパーソンがファンドを離れてしまった場合、ファンドの活動をストップさせる必要があります。変な人に自分の大切なお金の運用を任せることはできません。

もっとも、ファンドの活動をストップさせるといっても、いくつか選択肢があります。

(1)キャピタルコールを一時凍結する

資金を追加的に出資するのは危険すぎるので、これをストップする方法です。

凍結を解除する方法も決めておく必要があります。ファンド構成員の一定割合以上の承認などを凍結解除事由とする方法などが考えられます。

(2)投資活動を凍結する

出資された資金を使って行う投資活動をストップする方法です。

キャピタルコールから投資までの間にキーパーソンがいなくなった場合をカバーします。
目利きがすんでいる状態なので、ここまでストップする必要があるかは要検討です。案件をストップすることで契約相手方(株式の売主など)に違約金を支払う必要が出てくる可能性もあるので、慎重な検討が必要です。

ただし、キャピタルコールで得た資金を投資活動以外に充てることができてしまう場合には、資金を変に使われてしまう可能性もあるので注意が必要です。

凍結解除方法を決めておく必要については(1)と同様です。

(3)投資期間の終了

一時凍結ではなく、投資期間自体終了してしまい、新規のキャピタルコールや投資活動をストップする方法です。

この方法だと、キーパーソン条項がトリガーされた場合、ファンドは投資対象の保持・売却のみを行うことになります。

投資期間が終了により管理報酬が減額されるアレンジがなされている場合、キーパーソン条項のトリガーにより管理報酬が減額されます。

キャピタルコールをしてしまった投資については例外的に投資可能とするアレンジもありえます。

上記(1)または(2)による一時凍結後、凍結解除できずに一定期間経過してしまった場合、この(3)の効果が生じるというアレンジもありえます。

(4)ファンドの解散

キーパーソンがファンドを離れてしまったらすぐに資金を返してほしいということもあると思います。ハンズオンファンドの場合、重要な役割を担う人がいなくなってしまったら、投資対象の価値向上は見込めないと考える投資家もいると思います。

この場合には、キーパーソン条項の効果としてファンドの解散を規定します。あるいはファンドからの脱退権が発生すると規定することもできます。

とはいえ、流動性の低い資産に投資している場合、ファンドの解散やファンドからの脱退を認めることは投資対象の資産としての価値をさらに下げることになりかねませんので、このような規定を設けることには慎重になったほうがよいと思います。

4.キーパーソン条項をトリガーさせない工夫

キーパーソンにファンドを離れるつもりがなくても、人生何がおきるかわかりません。予期せぬ事情によって不本意にキーパーソン条項をトリガーしてしまうことは避けたほうが賢明です。

また、キーパーソンがファンドを離れるときには、キーパーソンがいなくなっても問題ない状況になっている可能性もあります。

そこで、キーパーソン条項をなるべくトリガーさせない工夫をしておくことが必要です。

ファンド契約書の変更によってあらかじめキーパーソンを変更する方法なども考えられますが、必ずしもファンド契約書の変更の手続きよりも簡便な方法のほうが望ましいこともあります。また、時間的な余裕がないこともあります。

まず、トリガー自体を回避する方法としては、アドバイザリー・ボードの承認によりキーパーソンを変更可能とするアレンジがありえます。

また、キーパーソンがファンドを離れてから一定の猶予期間経過後にキーパーソン条項がトリガーされるというアレンジもあります。この場合、猶予期間中にキーパーソンの変更などを対処することとなります。

このほか、キャピタルコール条項トリガーの効果のうち、軽いものだけはすぐに発生するとし、重たいものは一定期間経過後に発生するというアレンジにより、重要な効果が不本意に発生することを避けるという方法もあります。