ファンド契約書の課税額分配(Tax Distribution)についてです。

訳語について自信がなかったのでググって見ましたが、日本語でこれに関する説明は見当たりませんでした。もしかしたら本邦初かも??

組合は課税上パススルー・エンティティとして扱われますので、組合型のファンドでは、手元に現金が来ない段階で所得を認識すべき場合があります(関連する法人税基本通達はこちら。)

特に、キャリード・インタレストの支払いを留保される場合(キャリード・インタレストの支払い方については前にまとめました→)、ファンド運営者(GP)にとっては、この問題は切実だったりします。

この場合に対応するため、ファンド契約書に課税額分配(Tax Distribution)が定められる場合があります。

これは、ざっくりといえば、ファンドがファンドの構成員に対して納税すべき金額を分配するという規定です。

ファンド構成員すべてを対象とする場合もあれば、ファンド運営者(GP)のみを対象とする場合もあります。

これは、ファンドの建付けとして、所得認識とキャッシュ・フローの問題が誰に生じるかによって異なってきます。

この問題がファンド運営者のみに発生する場合にはファンド運営者のみを対象とし、ファンド構成員すべてに発生する場合はファンド構成員すべてを対象とします。

分配資金の出所ですが、キャリード・インタレストの支払いを留保していることが原因であれば、キャリード・インタレストの前払いという形になると思います。

ファンド構成員全般の問題である場合、キャピタル・コールで資金を得ることを認めるパターンのほか、手元資金の範囲でのみ分配可能とするパターン、借り入れを行うパターンなどがありえます。

課税額分配をどうやって支払うか、支払った後はどうやって処理するか、などいろいろ考慮すべき点がありますが、投資家の属性などによって具体的に処理を検討する必要があります。