2.ヘッジファンド持分に連動するデリバティブ

ヘッジファンドに直接投資する代わりに、ヘッジファンド持分に連動するデリバティブに投資した場合、短期譲渡所得を長期譲渡所得に変換することができま す。

例えば、ヘッジファンド持分についてのフォワード(相対で行われる先物・先渡取引。差金決済のものを含む。)の場合、投資家は将来の一定の日においてヘッ ジファンド持分を譲渡するという約束をし、当該日に実際に譲渡をすることになります。この際、投資家は1年以上保有したヘッジファンド持分を譲渡すること になりますので、そこでの利益は長期譲渡所得を構成することになります。

したがって、投資家としては短期譲渡所得を長期譲渡所得に変換することができそうです。

しかも、このような取引をすると、利益の認識が将来の一定の日まで繰り延べられるばかりか、ヘッジファンドにおいて発生した各所損益も通算できてしまうと いうメリットも有ります。

3.相手方の問題

投資家がこのようなデリバティブ取引を行うためには、相手方が必要です。相手方が当該ヘッジファンド持分の価格が下落すると信じているような場合には契約 が成立しますが、そのような相手方を見つけるのは困難です。

そこで、金融機関が相手方候補として上がってきます。金融機関であれば多数の投資家を相手方としつつそのリスクをヘッジして、手数料収入を得るというビジ ネスができそうです。

金融機関は、ヘッジファンド持分を購入することによりこの取引のリスクをヘッジすることができます(理論的にはヘッジファンドの行う投資と同じ投資を行え ばヘッジ可能ですが、現実的に不可能です。)。

そして、金融機関がヘッジを行う際に投資家がヘッジファンドに直接投資するのと同じ課税を受けるのであれば、金融機関はそれを投資家に転嫁するだけでので金融機関を相手方とする意味はありません。

しかし、金融資産の時価評価(IRC Section 475)が求められている金融機関であればその心配はありません。

すなわち、ヘッジファンド持分を時価評価する一方で、投資家を相手方とするデリバティブも時価評価することになりますので、差し引きゼロで課税なしとなります。


続きます。