タイムリーすぎるタイトルですが、報道になっている件ではなく、前回に引き続きアメリカの話です。

情報提供者をTipper、情報受領者をTippeeと言います。

情報受領者が受領した情報に基づいて取引した場合には、インサイダー取引違反とする必要があります。ですが、何でもかんでも捕捉するのでは広すぎるので、判例法上、「個人的な利益(personal benefit)」が要件とされています。

したがって、情報提供者において、情報開示の見返りとして個人的な利益を得るつもりがなければ、インサイダー取引の責任は問われません。そして、情報提供者が問題なしなら、受領者も責任を問われることはありません。

例えば、会社の役員が非公開情報を一部投資家に提供したとしても、それだけでは発行者株主に対する「裏切り」はありません。なので、受領者のほうで非公開情報を使って取引を違法なインサイダー取引とはされません。

日本のルールに慣れていると、直感的には捉えにくいかもしれませんが、アメリカでは「裏切り」があったかどうかを中心に据えているというのを忘れなければ、わかりやすいかもしれません。

日本の場合、周知する方法として「公表」の意義が具体的に定められており、これによって非公開情報を公にしていくのですが、アメリカではインサイダー取引との関係では「公表」でインサイダー情報性を解消するということにはなっていません。

「裏切り」がなければ一部の人にだけ情報を提供してもいいんじゃないの?というのがアメリカのインサイダー規制です。

でもそれでは情報の非対称性を生み、情報をもっている一部の人が他の人を食い物にしてしまいます。そこで、Regulation FDというのがあり、公表するときはちゃんと周知することが求められています。

日本とはかなり構造が違いますね。 Regulation FDは、インサイダー取引とは関係していますが、 日本とは異なりインサイダー規制に組み込まれているわけではありません。

主な参考判例
前回:O'hagan
今回:Dirks