Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
Biz Law Hack本館はこちら。http://bizlaw.ldblog.jp/

カテゴリ:私募ファンド

PEファンド運営者の従業員にやる気を出してもらうためには、業績に連動する報酬を与えることが大事です。

ファンドの成績が上がれば報酬も上がるという仕組みにしておけば、従業員はがんばって働いてくれるはずです。

そのような報酬の制度設計としては、業績連動の給与というのがまず考えられます。また、ファンド運営者が株式会社形態であれば新株予約権を使うことなども考えられます。

しかし、従業員がファンドに投資できればより直接的ですし、税金との関係でも有利な取り扱いがありえます。

そこで、従業員がファンドに投資することが第一選択肢となりますが、やや問題があります。

(1)日本の場合

適格機関投資家等特例業務としてファンドの運営を行っている場合、適格機関投資家以外の投資家の数には制限があります。

そのため、(i)もともと適格機関投資家以外の投資家の数が多いファンド、及び/又は(ii)従業員の数が多いファンドの場合、適格機関投資家等特例業務の要件を満たさなくなってしまう可能性があります。

そうすると、金融商品取引業者としての登録が必要となり、各種業規制を遵守する必要が出てきてしまいます。

これを避けるためにはどうするかを検討する必要がありますが、いろいろと状況に応じてのことなので、ここでは省略。

(2)アメリカの場合

PEファンドなどは、投資会社法上の投資会社に該当しないように、適格購入者(qualified purchasers)ではない投資家の人数を気にするのが通常です。日本と同じような状況にあります。

詳しくは、以前のエントリを参照。
投資家の人数計算@アメリカ その1
投資家の人数計算@アメリカ その2
投資家の人数計算@アメリカ その3

しかし、インセンティブ・プランに関して日本とは大きな違いがあります。それは明示的例外規定の存在です。

ファンド運営者の従業員がファンドに対して投資する場合には、投資会社法Section 2a(13)のEmployees' securities companyに該当するようにファンドを設計して、投資会社に該当することを避けることができます。

employees' securities companyについては、Section 2(a)(13)に定義があります。

これによると、employees' securities companyとは、 投資会社又はこれに類似する発行者であって、その発行済みの有価証券(ショートタームペーパーを除く。)が以下のいずれか者によって受益的に保有されているものをいいます。
  • 単一のまたは関連会社の関係にある2以上の雇用者の被用者(employees or persons on retainer)だけ
  • かかる1以上の雇用者の元被用者だけ
  • かかる被用者の直接の親族(members of the immediate family)だけ
  • 上記カテゴリのいずれかに該当する者だけ
  • 雇用者と上記カテゴリのいずれかに該当する者だけ
このemployees' securities companyに該当すると、Section 3の投資会社に該当はしますが、申請することにより投資会社法の規制を免れることができます(Section 6(b))。


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4.キーパーソン条項をトリガーさせない工夫

キーパーソンにファンドを離れるつもりがなくても、人生何がおきるかわかりません。予期せぬ事情によって不本意にキーパーソン条項をトリガーしてしまうことは避けたほうが賢明です。

また、キーパーソンがファンドを離れるときには、キーパーソンがいなくなっても問題ない状況になっている可能性もあります。

そこで、キーパーソン条項をなるべくトリガーさせない工夫をしておくことが必要です。

ファンド契約書の変更によってあらかじめキーパーソンを変更する方法なども考えられますが、必ずしもファンド契約書の変更の手続きよりも簡便な方法のほうが望ましいこともあります。また、時間的な余裕がないこともあります。

まず、トリガー自体を回避する方法としては、アドバイザリー・ボードの承認によりキーパーソンを変更可能とするアレンジがありえます。

また、キーパーソンがファンドを離れてから一定の猶予期間経過後にキーパーソン条項がトリガーされるというアレンジもあります。この場合、猶予期間中にキーパーソンの変更などを対処することとなります。

このほか、キャピタルコール条項トリガーの効果のうち、軽いものだけはすぐに発生するとし、重たいものは一定期間経過後に発生するというアレンジもあります。これによって、重要な効果が不本意に発生することを避けることができます。

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3.キーパーソン条項トリガーの効果(PEファンドの場合)

投資家としては、キーパーソンがファンドを離れてしまった場合、ファンドの活動をストップさせる必要があります。変な人に自分の大切なお金の運用を任せることはできません。

もっとも、ファンドの活動をストップさせるといっても、いくつか選択肢があります。

(1)キャピタルコールを一時凍結する

資金を追加的に出資するのは危険すぎるので、これをストップする方法です。

凍結を解除する方法も決めておく必要があります。ファンド構成員の一定割合以上の承認などを凍結解除事由とする方法などが考えられます。

(2)投資活動を凍結する

出資された資金を使って行う投資活動をストップする方法です。

キャピタルコールから投資までの間にキーパーソンがいなくなった場合をカバーします。
目利きがすんでいる状態なので、ここまでストップする必要があるかは要検討です。案件をストップすることで契約相手方(株式の売主など)に違約金を支払う必要が出てくる可能性もあるので、慎重な検討が必要です。

ただし、キャピタルコールで得た資金を投資活動以外に充てることができてしまう場合には、資金を変に使われてしまう可能性もあるので注意が必要です。

凍結解除方法を決めておく必要については(1)と同様です。

(3)投資期間の終了

一時凍結ではなく、投資期間自体終了してしまい、新規のキャピタルコールや投資活動をストップする方法です。

この方法だと、キーパーソン条項がトリガーされた場合、ファンドは投資対象の保持・売却のみを行うことになります。

投資期間が終了により管理報酬が減額されるアレンジがなされている場合、キーパーソン条項のトリガーにより管理報酬が減額されます。

キャピタルコールをしてしまった投資については例外的に投資可能とするアレンジもありえます。

上記(1)または(2)による一時凍結後、凍結解除できずに一定期間経過してしまった場合、この(3)の効果が生じるというアレンジもありえます。

(4)ファンドの解散

キーパーソンがファンドを離れてしまったらすぐに資金を返してほしいということもあると思います。ハンズオンファンドの場合、重要な役割を担う人がいなくなってしまったら、投資対象の価値向上は見込めないと考える投資家もいると思います。

この場合には、キーパーソン条項の効果としてファンドの解散を規定します。あるいはファンドからの脱退権が発生すると規定することもできます。

とはいえ、流動性の低い資産に投資している場合、ファンドの解散やファンドからの脱退を認めることは投資対象の資産としての価値をさらに下げることになりかねませんので、このような規定を設けることには慎重になったほうがよいと思います。


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2.誰がキーパーソンか

まず、誰がキーパーソンかを定める必要があります。

目利きをする人は、基本的に余人をもって代えがたい性格のものなので、この人がキーパーソンであることはそんなに難しくありません。

ハンズオン担当者の場合は少し微妙です。

余人をもって代えがたいほどの活躍をする人というのはそんなに多くありません。ある程度の分散投資がされるのであれば、重要な役割を果たすハンズオン担当者も複数いるはずです。

このハンズオン担当者全員をキーパーソンとしてしまうと、やや厳しすぎるきらいがあります。

たとえば、重要な人が5人いる場合に、そのうち1人が何らかの 理由で辞めることはそんなに稀なことでもありません。また、1人辞めても残りの4人でカバーできることも多いと思われます。

そのため、以下のようなアレンジがされることがあります。
  • 余人をもって代えがたい人を1st Tierのキーパーソンとする。
  • 複数のハンズオン担当者を2nd Tierのキーパーソンとする。
  • 1st Tierのキーパーソンの辞任は、直ちにキーパーソン条項のトリガーになるとする。
  • 2nd Tierのキーパーソンの辞任は、一定割合を超えた場合にのみキーパーソン条項のトリガーになるとする。

3.キーパーソン条項トリガーの効果(PEファンドの場合)

投資家としては、キーパーソンがファンドを離れてしまった場合、ファンドの活動をストップさせる必要があります。変な人に自分の大切なお金の運用を任せることはできません。

もっとも、ファンドの活動をストップさせるといっても、いくつか選択肢があります。

(1)キャピタルコールを一時凍結する

資金を追加的に出資するのは危険すぎるので、これをストップする方法です。

凍結を解除する方法も決めておく必要があります。ファンド構成員の一定割合以上の承認などを凍結解除事由とする方法などが考えられます。

(2)投資活動を凍結する

出資された資金を使って行う投資活動をストップする方法です。

キャピタルコールから投資までの間にキーパーソンがいなくなった場合をカバーします。
目利きがすんでいる状態なので、ここまでストップする必要があるかは要検討です。案件をストップすることで契約相手方(株式の売主など)に違約金を支払う必要が出てくる可能性もあるので、慎重な検討が必要です。

ただし、キャピタルコールで得た資金を投資活動以外に充てることができてしまう場合には、資金を変に使われてしまう可能性もあるので注意が必要です。

凍結解除方法を決めておく必要については(1)と同様です。

(3)投資期間の終了

一時凍結ではなく、投資期間自体終了してしまい、新規のキャピタルコールや投資活動をストップする方法です。

この方法だと、キーパーソン条項がトリガーされた場合、ファンドは投資対象の保持・売却のみを行うことになります。

投資期間が終了により管理報酬が減額されるアレンジがなされている場合、キーパーソン条項のトリガーにより管理報酬が減額されます。

キャピタルコールをしてしまった投資については例外的に投資可能とするアレンジもありえます。

上記(1)または(2)による一時凍結後、凍結解除できずに一定期間経過してしまった場合、この(3)の効果が生じるというアレンジもありえます。

(4)ファンドの解散

キーパーソンがファンドを離れてしまったらすぐに資金を返してほしいということもあると思います。ハンズオンファンドの場合、重要な役割を担う人がいなくなってしまったら、投資対象の価値向上は見込めないと考える投資家もいると思います。

この場合には、キーパーソン条項の効果としてファンドの解散を規定します。あるいはファンドからの脱退権が発生すると規定することもできます。

とはいえ、流動性の低い資産に投資している場合、ファンドの解散やファンドからの脱退を認めることは投資対象の資産としての価値をさらに下げることになりかねませんので、このような規定を設けることには慎重になったほうがよいと思います。

4.キーパーソン条項をトリガーさせない工夫

キーパーソンにファンドを離れるつもりがなくても、人生何がおきるかわかりません。予期せぬ事情によって不本意にキーパーソン条項をトリガーしてしまうことは避けたほうが賢明です。

また、キーパーソンがファンドを離れるときには、キーパーソンがいなくなっても問題ない状況になっている可能性もあります。

そこで、キーパーソン条項をなるべくトリガーさせない工夫をしておくことが必要です。

ファンド契約書の変更によってあらかじめキーパーソンを変更する方法なども考えられますが、必ずしもファンド契約書の変更の手続きよりも簡便な方法のほうが望ましいこともあります。また、時間的な余裕がないこともあります。

まず、トリガー自体を回避する方法としては、アドバイザリー・ボードの承認によりキーパーソンを変更可能とするアレンジがありえます。

また、キーパーソンがファンドを離れてから一定の猶予期間経過後にキーパーソン条項がトリガーされるというアレンジもあります。この場合、猶予期間中にキーパーソンの変更などを対処することとなります。

このほか、キャピタルコール条項トリガーの効果のうち、軽いものだけはすぐに発生するとし、重たいものは一定期間経過後に発生するというアレンジにより、重要な効果が不本意に発生することを避けるという方法もあります。

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1.キーパーソン条項が必要となる理由

投資ファンドには、投資対象に対する目利きが必要はファンドと、目利きが不要なファンドがあります。

目利きが必要なファンドの典型としては、バリューファンドが挙げられます。

目利きが不要なファンドの典型としては、指数連動型ファンドが挙げられます。

PEファンドも基本的に割安の会社を探して投資するので、目利きが必要なファンドに該当します。

また、ヘッジファンドも、投資態様によりますが、割安または割高な投資対象を探して投資(空売りを含む)するので、目利きが必要なファンドに該当します。

このような目利きが必要なファンドにとっては、ファンドマネージャーの目利き力が投資成績に直結します。

なので、投資対象を選ぶ人が誰かというのが、ファンドにとって非常に重要になります。

また、ハンズオン型のファンドの場合、ハンズオンに関与する人も重要です。投資対象会社の企業価値をあげることができるかどうかは、この人の力量しだいで決まります。

これらの人がファンドから離れてしまっては、ファンドの成功に暗雲が立ち込めてきます。

これらの人が個人としてファンド運営者(GP)となっていれば、ファンド契約内のGPの辞任に関する規定で対応するのできます。

しかし、目利き人がGPの一構成員(役員、従業員、パートナーなど)に過ぎない場合、契約で別途規定する必要があります。

このための契約条項がキーパーソン条項です。この規定により、GP構成員の変動も制限することが可能になります。

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