Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:私募ファンド

ファンド投資家が有限責任のメリットを享受できるファンドとしては、日本では投資事業有限責任組合、海外ではリミテッド・パートナーシップがあります。

これらのエンティティでは、投資家は有限責任のメリットを享受できますが、ファンドの運営者は無限責任を負う必要があります。

そのため、ファンド投資家はファンド運営者と区別が重要になりますが、大雑把にいうと、ファンド投資家は有限責任のメリットを享受するためには受動的である必要があります。

投資事業有限責任組合契約に関する法律9条3項では、「有限責任組合員に組合の業務を執行する権限を有する組合員であると誤認させるような行為があった場合」には、「その誤認に基づき組合と取引をした者に対し」、無限責任になると定めています。

また、Delaware Code TITLE 6のSection 17-303では、リミテッド・パートナーが「事業の支配に参加した(participate in the control of the business)」場合には、「リミテッド・パートナーの行為を基に、リミテッド・パートナーがジェネラル・パートナーであると合理的に信じた取引相手方に対してのみ(persons who transact business with the limited partnership reasonably believing, based upon the limited partner's conduct, that the limited partner is a general partner.)」、無限責任になると定めています。

こうして比べてみると、デラウエア州法のほうが取引相手方にとって少し厳しい(無限責任になる場合が限られている)ようです。

文言だけの比較ですが、具体的には以下の3点が異なります。
  • デラウエア州法では事業の支配への参加が必要だが、日本法では「誤認させるような行為」だけでよい。
  • デラウエア州法では”行為”と”誤認”の因果関係が必要なことは明らかだが、日本法では必ずしも明らかではない。
  • デラウエア州法では"誤認"が合理的であることが求められているが、日本法では明示していない。
解釈まで考えていくと別の議論もできそうですが、少なくとも日本では判例の蓄積がないので、無限責任になってしまうリスクについて少し慎重に考えたほうがよいと思われます。

特に、海外主体で作ったファンドの日本化を行う際には、アグレッシブな条項が入っていないか注意が必要です。


なお、経産省による整理はこちら。裁判所の判断はこれに拘束されるものではありませんが、一応の指針としては押さえておいたほうが良いと思います。

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3.ファンド運営者に売る

ファンド運営者(又はその関連者)が責任を持って引き取るというのも選択肢として挙げられます。

ただし、承継ファンドに売る場合以上に利益相反が問題になりますので、価格決定の公正さを担保する方法は不可欠といえます。

4.ファンドの期間を延長する

契約書にはファンドの存続期間が定められていますが、これを延長して市場の回復を待つという選択肢があります。

ただし、投資家側に規制法や投資方針上の制約があるなどして、ファンドの存続期間の延長は許容できない場合が少なくありません。

5.清算用のエンティティを用意する

ファンド自体は終了したとしても、一定期間資産を保有するエンティティを用意し、資産が処分できた後に代金を構成員に分配するという方法もあります。

ファンドの期間延長の際に問題となる規制法や投資方針上の制約は、この場合にも問題となりますが、この方法によって避けられる場合もありますので、選択肢に入れておいたほうがよいことも多いと思われます。

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ファンドが投資資金を回収して元本・利益を投資家に分配するためには、資産を処分して現金化することが必要となります。ファンドには存続期間がありますので、一定期間内に必ず処分をしないといけないのですが、市場の状況によっては換金が困難になることがあります。とくに流動性の低い資産に投資するファンドにとっては、この問題は深刻だろうと思います。

この際にとりうる方法はいくつかありますが、契約書の作成段階において、ファンド運営者などのような選択肢と裁量を与えるかを検討しておく必要があります。

1.現物で分配する

これについては別途まとめましたが、いろいろと難しい問題があります。

2.承継ファンドに売る

ひとつのファンドが終了する際には、ファンド運営者は新たにファンドを組成します(そうしないと仕事がなくなるから。)。

そこで、資産の処分先として、新たに組成されるファンドが候補に上がってきます。

ただし、既存ファンドと承継ファンドの投資家はかならずしも一致しませんので、利益相反の問題が生じやすいといえます。譲渡代金が高ければ承継ファンドの投資家は損をしますし、譲渡代金が安ければ既存ファンドの投資家が損をします。

とはいえ、買い手のひとつとしては有力な候補になるのは間違いないので、譲渡を一切禁じるのではなく、譲渡代金の公正さを担保できるような仕組みを作ったうえで譲渡を認めるというのが望ましいと考えられます。

譲渡代金の公正さの担保する方法としては、アドバイザリー・ボードの関与が考えられます。また、市場性のある有価証券(marketable security)などは、あらかじめ価格決定方法を決めておくことも考えられます。

なお、文脈は違うものの承継ファンドについてはこちらこちらも参照。

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漢字ばっかりのタイトルになってしまいました。

適格機関投資家の定義は、金商法2条3項1号、定義府令10条に規定があります。

この中で、定義府令10条1項18号は投資事業有限責任組合自体が適格機関投資家に該当するとしています。

このブログの愛読者(もしいれば。)は、これに少し違和感を覚えるのではないかと思います。

日本法では、投資法人を除くファンド全般について、基本的に社会実体がないことを前提としています。ファンド持分の発行者はファンド自体ではなくファンド運営者とされていたり、業規制などもファンド運営者に対するものとして規制されていたりします。

これは投資事業有限責任組合でも同様です。持分発行者は無限責任組合員とされています。また業規制の対象も無限責任組合員です。

なのに、定義府令10条1項18号は投資事業有限責任組合自体が適格機関投資家に該当するとしています。ちょっと不思議です。

これは他の形態の組合型ファンドに関する規定とも一貫しません。これらのファンドについてはファンド運営者に着目して適格機関投資家該当性が判断されます。法人の場合は23号、個人の場合は24号です。

スジ的には、投資事業有限責任組合についても「投資事業有限責任組合の無限責任組合員(投資事業有限責任組合の無限責任組合員として取引を行う場合に限る。)」などとすべきような気がします。

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4.追加クロージングの制限

追加クロージングは、既存のファンド構成員にとって不利な面があります。

たとえば、新規の投資家はファンドの初期投資成績を見てからの投資判断となるため、既存投資家の投資にただ乗りができてしまいます。すなわち、既存投資家のリスクにより投資された初期の投資案件で得られた利益について、新規の投資家がただ乗りでいてしまいます。

また、ファンドの持分割合が希釈化するため、ファンドに対する影響力も相対的に下がることとなります。

そのため、追加クロージングについては、時期と金額について制限が課されることが一般的です。

なお、追加クロージングの時期の制限は、ファンド運営者のリソースを投資活動に集中させる意味でも契約書に規定しておくことが望ましいといえます。

5.追加出資権

既存投資家に対して、新規投資家加入の際に自己の出資約束金額の増額を求める権利が与えられることがあります。

これにより、投資家はファンドに対する出資比率を維持することが可能です。

この追加出資権が使われる場合としては、以下が考えられます。
  • 規制法や投資方針などで出資比率が一定割合以上でなければならないと定められている場合
  • 規制法や投資方針などで出資比率が一定割合以下でなければならないと定められているために出資約束金額が抑えられていたが、金額的にはもっと投資したいと考えている場合

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