Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:私募ファンド

PEファンドを組成するにあたっては、投資家が十分集まった段階でクロージングへと進みます。

1.クロージング手続き

クロージングでは以下のようなことが行われます(厳密にはクロージングでないものも入っていますが)。
  • ファンド運営者及び各投資家により、契約書その他必要書類にサインがなされる
  • ファンドの運営が開始される
  • 管理報酬とファンド費用のためのキャピタル・コールがなされる
  • すでに投資案件があれば、それについてもキャピタル・コールがなされる
  • ファンドの構成員によりキャピタル・コールに応じた出資がなされる
2.複数のクロージング

ファンドの組成する際には、一定の規模を目標として投資家が勧誘されますが、この目標には一定のレンジがあることが通常だと思います。

目標規模の上限まで投資家が集まった場合にはクロージングは1回だけで終わりですが、目標規模の下限程度までしか投資家が集まらなかった場合には、複数回クロージングを行うことがあります。

後者の場合、必要最低限の投資家でファンドを一度立ち上げておいて、事後的に投資家をファンドに追加していくことになります。

3.新規投資家の取扱い

契約書次第でいろいろなアレンジがありえますが、PEファンドの場合、持分の時価評価が困難なため、新規投資家は、あたかも当初からファンドに投資していたかのように取扱われるとするのが一般的ではないかと思います。

まず、出資については、新規投資家は、既存投資家と新規投資家とが出資約束金額ベースでプロラタになるように計算された金額プラス利子を出資します。そして、ファンドは出資を受けた金銭を既存投資家にプロラタで返却します。

たとえば、既存投資家の出資約束金額が40億円、既出資が10億円のところに、出資約束金額10億円の新規投資家が加わったとします。この場合、新規投資家は2億円(10億円の1/5)プラス利子を出資することになり、その出資された2億円プラス利子は既存投資家に返却されます。

管理報酬についても、当初からファンドに参加していたものとして支払われるのが一般的ではないかと思います。

別の方法として、新規投資化は既存の投資には参加できないとアレンジされたり、既存投資の含み益部分についてはプレミアムを乗せて払い込みを行うとアレンジされたりというのもありえますが、実務上の手間などもあるので、メジャーではないと思います。


続きます。
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ファンドの投資家の中には、法令または運用ガイドラインなどによって特定の投資が禁止されている投資家もいます。

ファンドを通じた間接投資も禁止されるかが最初のポイントですが、間接投資も禁止される場合、次にどのように取り扱うかが問題になります。

考えられる方法は以下の3つです。
  • その投資家のファンド参加を拒む
  • その投資家の投資できないものにはファンドも投資しない(投資制限に含めるorサイドレターを締結する)
  • その投資家を問題の生じる投資からのみ除外する
投資家の投資制限とファンドの運用方針との間の不一致が大きい場合には、一つ目の方法が選ばれると思います。これが小さい場合には、二つ目の方法が選ばれると思います。

微妙なケースでは、三つ目が選択肢としてあがってきます。

しかし、法律的に難しい問題がありそうです。

1.合有の問題

「組合=合有」という考えでいくと、問題が生じる投資について不参加だと言い張っても、潜在的には持分を持っていることになってしまう気がします。

”あまりにドグマチックだ”という批判は簡単ですが、法律意見書をかけますか?裁判で争いになったときに勝てますか?ということを考えるとなかなかに難しいです。

もっとも、投資ガイドラインの問題であれば、決め方の問題だけなのでどうにか対処可能です。

また、規制法についても、受動的な投資家について「規制法との関係では共有的に切り分けて考えていいですよ」というのは十分ありえる考え方なので、ノーアクションレターでも出してもらえれば解決可能です。ただ、実際にノーアクションレターを得ることが費用対効果的に見合うのかは別の問題としてあります。

2.他の投資家の持分比率

合有問題が解決した後の話として、特定の投資に対する不参加があった場合、残りの投資家だけで投資を行うことになります。

そうすると、今度は他の投資家の投資比率が問題になってきます。

たとえば、単一の会社の議決権の5%超を保有できない投資家がファンド持分の5%を保有しているとします。

この投資家は、ファンドの全投資家が投資に参加する限り、ファンドがある会社の株式を100%取得したとして間接保有議決権割合は5%ですので法令or投資ガイドラインに違反することはありません。

しかし、誰かがその投資に参加しないと、その会社への間接保有議決権割合は5%を超えてしまいます。

この場合の対応をどうするかという問題もあります。他の投資家の割合をさらに上げるなど方法がありますが、なかなか面倒です。

3.会計・税務

これらについても検討が必要です。

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2.換金の難しさ

投資家としては、流動性の低い資産を受領しても処分に困りますので、そのような資産を受け取らないように制限を付けることがあります。

換金が難しい場合の対処方法は基本的に上記1と同じなのですが、深刻さの度合いが違うので、契約書では分けて規定することも検討したほうが良いと思われます。

3.価格の問題

現物分配をする際には、分配される資産をどのように評価するかが問題となります。

とくに、キャリード・インタレストはファンドの利益に連動しますので、ファンド運営者にとっては分配される資産を高く評価するインセンティブがあり、投資家との間で利益相反があります。

この点については、市場性を持つ有価証券(Marketable Securities)とそれ以外を分けて考えることが多いのではないかと思います。

(1) 市場性を持つ有価証券

まず、市場性を持つ有価証券については、市場価格などを参照して資産の評価を決めるとすることが多いと思います。

この点に関しては、市場性を持つ有価証券の定義や価格決定方法がファンドごとに異なるため、契約書を検討する際には注意が必要です。

市場性を持つ有価証券の定義については、基本的には取引所で取引されているかどうかで決定されると理解できるのですが、海外の取引所も含むのか、店頭も含むのか、取引所で取引されていれば流動性が低くてもよいか、などを検討する必要があります。

また、価格決定方法についても、参照すべき特定の日又は特定の期間をどのように設定するかについて、慎重な検討が必要です。

たとえば、流動性の低い有価証券の場合、現物分配後には値崩れを起こす可能性がありますので、現物分配前の価格を参照することが公正な評価といえないかもしれません。

(2) それ以外の資産

市場性を持つ有価証券以外の資産の場合、価格決定方法をあらかじめ決めておくのは難しいので、別途価格の公正さを担保する仕組みを用意しておく必要があります。

アドバイザリー・ボードが利益相反問題に対応する役割を担っていることが多いので、この承認を得るというのが一番メジャーな方法ではないかと思います。

4.現物分配後の管理

現物分配後においても、ファンド運営者(又はその関連者)によって資産を管理し続けてもらいたいという要請もありうると思います。

これをファンド契約書に言及することも可能です。ただし、このような資産管理が規制法上別の業として扱われる可能性もありますので、慎重な検討が必要です。

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ファンドからの利益分配・残余財産は基本的に現金で行われます。

しかし、タイミング的に資産の換金が困難だったり、法規制や契約上の制約などの要因によって資産が換金できなかったりということもあるので、ファンド運営者に現物分配を行う裁量が与えられることも少なくありません。

もっとも、実際に現物分配がされた場合、投資家の側で、規制法上の問題や投資方針違反を惹起したり、処分に困ったり、という問題が起きる可能性があるので、契約書を作る際には、現物分配について十分な注意を払うことが必要となります。

1.規制法違反・投資方針違反

現物分配として資産を受け取ることが規制法上の問題や投資方針違反となる場合、投資家としては現物分配を許容することはできません。規制法の問題は、資産の受領自体が法令違反になる場合のほか、新たに許認可が必要になる場合も含みます。

このような場合、投資家としては、どのような現物分配が規制法違反・投資方針違反となるかを検討し、ファンド運営者の裁量を制限するよう求めていくこととなります。

ただし、他の投資家にとっては現物分配が望ましい場合もあるため、その要請が認められるとは限りません。

そこで、原則として現物分配を認めつつ、一定の者だけには換金後に分配するという折衷的アレンジがなされることもあります。

もっとも、このようなアレンジが可能な状況とそうでない状況がありますので、現物分配を必要とする状況ごとに分析して検討する必要があります。また、一定の者を特別扱いすることについて、受任者としての注意義務上問題がないかも慎重に検討する必要があります。

さらに、一部の者のためになされた換金のコストをファンドの負担として良いのか、それとも換金を求める投資家だけの負担とするのかについても検討する必要があります。

換金を求める投資家だけのために当該投資家の費用で換金をするということになると、ファンド運営者の行為がファンドの運営とは別の規制法上の業とならないかについても検討する必要があります。

検討することばっかりですね。

続きます。

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2.最恵国待遇条項の付与について

最恵国待遇条項は、大口の投資家にのみ与えられることが多いと思います。一定額以上の投資を最恵国待遇条項付与の条件としておけば、大口投資のインセンティブになる可能性があります。

大口投資家に対して一律に最恵国待遇条項を与える場合、サイドレターではなくファンド契約に組み込む方法もあります。これにより、最恵国待遇条項のみを規定したサイドレターを締結する必要がなくなります。

3.最恵国待遇条項からの適用除外

サイドレターで合意されるすべての条項について最恵国待遇条項が適用されると不都合な場合があります。

たとえば、持分譲渡の事前承認やファンドと協調投資を行う権利などは、最恵国待遇条項の対象にするのに向かないことがあると思います。投資家固有の法規制・投資方針に関する条項も同様です。

このような条項については最恵国待遇条項の対象にならないことを定めておく必要があります。最恵国待遇条項を最初にドラフトする段階で、適用除外の項目を 検討しておくことが望ましいですが、適用除外が追加される旨を留保しつつサイドレターの交渉を行うこともひとつの方法だと思います。


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