Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:PEファンドへの出資

(4)キャピタルコールのための通知期間

ファンド構成員は支払通知の後一定の期間で出資をする必要がありますが、この期間についても慎重に検討する必要があります。

期間の長さだけではなく、期間の起算点も考慮する必要があります。

キャピタルコールがなされるのは、ファンドとして投資機会がある場面なので、ファンドの構成員が実際に支払通知を知った時点を起算点とすることは現実的ではありません。支払通知の発送時点を起算点とするのが一番手堅い選択肢です。

出資約束を果たせない場合には債務不履行の責任が発生しますので、ファンド構成員としては慎重に検討する必要があります。

個人で投資する場合、長期の海外旅行などもありえますので、適時に出資できるようにアレンジしておくことが必要です。

(5)出資の受領確認

ファンド運営者が出資金の受領したことを証明するため、ファンド契約書で受領確認について定めることもあります。

(6)出資約束金額の減額

出資約束金額は、ファンド構成員がファンドに対して出資を約束する金額ですので、ファンド構成員としては出資する準備をしておかなければなりません。

ファンドとして投資するあてがなさそうな場合に減額請求できるようアレンジしておくと、無駄に出資の準備をしなくてすみます。

また、管理報酬が”出資約束金額の一定割合”と決まっている場合、出資約束金額の減額が減少にもつながります。

(7)出資義務の不履行

前に検討したとおりです(その1その2その3)。

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4.いくつかの問題点

(1)割合の問題

ファンドが行うある投資について、一部のファンド構成員が参加しない場合がありますが、この場合、出資未履行金額の残割合が投資家ごとに異なることとなります。

上記の例で言うと、投資案件1に必要な3億円はすべてAの出資でまかなわれたとします。この場合、投資案件1の後には出資未履行金額は以下のようになります。

 A:出資未履行金額 2億8800万円
 B:出資未履行金額 3億9200万円

投資案件2もファンドの初年度中(=2年目の管理報酬未発生)に生じた場合、どのような割合で出資がなされるべきでしょうか。
  • 出資未履行金額の残額割合に応じて
  • 出資約束金額の割合に応じて
あとで困らないように契約書できっちり決めておく必要があります。

(2)使わなかった資金をどうするか

キャピタルコールしてしまったものの、使わなかった資金をどうするかも契約書で決めておく必要があります。

キャピタルコール方式を選ぶ理由からすると、あまった資金はファンド構成員に返却したほうがよさそうですが、返金するにもコストがかかるので、安全な運用をするという選択肢もあります。

契約書に一つの方法を決めてしまうと後の柔軟性を奪ってしまうので、いくつか選択肢を列挙してファンド運営者が決めるというアレンジも可能です。

(3)キャピタルコールのための通知内容

キャピタルコールのための支払通知に出資を求める金額と期限が記載されるのは当然ですが、そのほかに何を記載すべきかについて契約書で定める必要があります。

ファンド構成員としては資金使途についても知りたいところですが、タイミング的に公表できない場合もありえるので、ある程度の柔軟さを残しておくと後で困らないと思います。


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2.用語の説明

ファンド運営者がファンド構成員に対して出資を求める行為を「キャピタルコール」といいます。キャピタルコールのための通知を「支払通知」といったりします。

各構成員のファンドに対する出資金額の上限は、「出資約束金額」といいます。「キャピタルコミットメント」と言ったりもします。

キャピタルコールに応じて出資された金額(=出資済みの金額)を「出資履行金額」といいます。英語だとCapital Contributionsなのですが、「キャピタルコントリビューション」というのを聞いたことはありません。

出資約束金額から出資履行金額を引いた額が、ファンド構成員が出資すべき義務の残額ですが、これを「出資未履行金額」といいます。

3.具体的に説明

以下の投資家がいるとします。

 A:出資約束金額 6億円
 B:出資約束金額 4億円

管理報酬(出資約束金額の年2%と仮定)が前払いの場合、ファンド組成時に管理報酬として2000万円が発生するので、Aに対して1200万円、Bに対して800万円のキャピタルコールが行われます。以後同じです。

投資案件1の実行に3億円必要となった場合、Aに対して1億8000万円、Bに対して1億2000万円のキャピタルコールが行われます。

7億円が必要となる投資案件があった場合、出資未履行金額(10億円-2000万円-3億円)を超えますので、借り入れその他の手段がない場合には(←契約次第)投資できません。出資約束金額を超えるキャピタルコールはできません。

投資案件2の実行に4億円必要となった場合、Aに対して2億4000万円、Bに対して1億6000万円のキャピタルコールが行われます。


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あえて説明する必要もないかもしれませんが、一応キャピタルコール方式について説明してみます。

1.一般的な説明

投資ファンドに参加するためには出資を約束する必要がありますが、その出資のタイミングには3種類あります。
  1. ファンドに参加する時点で全額を出資する。
  2. あらかじめ決まったスケジュールで分割して出資する。
  3. ファンド運営者から求められた段階で求められた金額を出資する。
3番目の方法をキャピタルコール方式と言います。

これは資金の無駄な滞留を防ぐことを目的としています。

PEファンドなどは、ファンドの組成後に何年かかけて投資対象を選定していくのが通常だと思いますが、投資対象が決まっていない段階で出資を受けてしまっても、ファンド運営者は投資対象が決まるまで現金のまま保管しておかなければなりません。

キャピタルコール方式は、必要なときに必要な金額の出資を受けることができるので、このような無駄な資金の滞留がありません。

さらに、内部収益率(IRR)は出資された後からの計算になるという点も、ファンド運営者がキャピタルコール方式を好む理由の一つといえます。


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4.ファンド運営者への信頼喪失と出資義務不履行

出資義務不履行の理由としては、資力がない場合のほか、ファンド運営者への信頼がなくなった場合もあります。

基本的に、他の投資家が自らの都合で不履行を選択できるとファンドの目的達成に支障がでるので、不履行に対しては懲罰的なサンクションを設けるのですが、ファンド運営者への信頼がなくなった場合を想定すると異なった考慮も必要となってきます。

たとえば、ファンド運営者に背任的行為があり、投資家としてはもはや資金を預けたくない場合には、不履行に対して厳しいサンクションは望ましくありません。

また、ファンド運営者が出資義務の不履行を発生させるようなキャピタル・コールを行うことで、ファンド運営者の解任やファンドの解散など阻止するできるような状況も防ぐ必要があります。

この問題は、どちらかというとキャピタル・コールの制限で対処するのだと思いますが、万が一を想定して契約書を作成するのは必ずしも容易ではありません。

5.出資義務不履行による影響とその対応

出資義務不履行の影響は小さくありません。

キャピタル・コールが投資案件が成約した後になされるという運用の場合、資金不足により投資案件の実行ができなくなる可能性があります。

債務の弁済や費用の支払いのためのキャピタル・コールであれば、ファンド自身の債務不履行が発生してしまいます。

ファンドオブファンズの場合にはさらに厳しい結果が予想されます。投資先のファンドから懲罰的なサンクションが課されてしまうと、ファンド全体に対する被害が甚大です。

この結果を避けるために、タイムリーに資金を調達できるようにしておく必要があります。考えられる方法としては以下のようなものがあります。
  • 一定割合を流動性の高い資産に投資する
  • 金融機関との間でリボルビング・ローン契約を締結しておく
  • 短期の通知で出資義務が発生する緊急用キャピタル・コールを設定する


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