Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
Biz Law Hack本館はこちら。http://bizlaw.ldblog.jp/

カテゴリ:金商法実務

重複上場ではない場合、国内でただ単に私募(私売出し)をする場合との対比になります。これは、指定アドバイザーにフィーを支払う負担と、TOKYO AIMに上場することのメリットを考えて、単なる私募と比較してどうかという問題になってきます。

一番重要なのは、TOKYO AIMに上場した場合の流動性と、上場しなかった場合の適格機関投資家間の流通市場での流動性にどれくらいの差があるか、だと思います。これに大きな差がないとすると、費用対効果で見た場合、上場しないほうが正解ということになりそうです。指定アドバイザー制度というのが有意的な差をもたらすという設計になっているのかもしれませんが、この問題点については次のエントリで。

また、どうせアンダーライターにフィーを支払うのであれば、「東証一部 上場」という看板を得た方が得だという考え方も大いにありうると思います(参考:なぜIPO初値は 高い方がよいか)。

この場合、継続開示の負担と「東証一部上場」という看板との費用対効果の検討になります。実質的に引受審査といえるようなものが済んでしまっているのであれば、もはや継続開示はそこまで重たい負担でもないような気がします。


続きます。
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まず、アンダーライター(引受人)+アルファの責任について。

TOKYO AIMを使ったとしても、結局、公募と同じような上場審査が必要になってしまうのだと、指定アドバイザーに払うフィーは大きくならざるをえず、上場企業にとっての魅力が減ってしまいます。

NYSEとかLSEとかからの重複上場であれば、本国でもアンダーライターがいるはずなので、そこをある程度信頼した形での制度設計ができたりするといいのかもしれませんが、執行可能性の面などで難しいのかもしれません。

日本市場よりも魅力が低い市場からの重複上場であれば、このコストを負担してもなおメリットがあるかもしれません。資本市場は今ひとつな国に魅力的な企業があれば、東京にやってきてくれるかもしれません。

でも、ニューヨークやロンドンではなく東京に来てもらうためには、何かメリットがないと難しいですよね。それってあるんでしょうか。


続きます。

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東証プロ市場、開設1年で上場ゼロというのがニュースになっていました。

TOKYO AIM詳しい説明は他に色々あるので省略しますが、要は「プロ」の投資家だけが参加出来る市場です。一般投資家保護のための煩わしい規制がないというのがメリットです。

ざっくりと言うと、公募じゃない(これに関連する規制がない)のに流通市場が確保されていて素晴らしい、ということを目指しているのだろいうと思います。

プロ向けということで規制が緩いかわりに、「指定アドバイザー(J-Nomad)」というのがゲートキーパーとしての役割を努めます(説明はこちら)。

信頼できる証券会社が指定アドバイザーに指定されるので、投資家としては、指定アドバイザーがきちんと監督していることを信頼して取引することができます。そのため、この制度は、市場における情報の非対称性についての疑心暗鬼を軽減し、投資家が安心して取引できることを確保するものといえます。

しかし、記事では、この指定アドバイザー制度が結構負担なために上場が進まないと書いてあります。

確かに、アンダーライター(引受人)+アルファの責任と、マーケットメーカーの責任というのは、結構重たいと思います。

次回以降、問題点として考えたことをつらつらと書き連ねてみます。


続きます。

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では、インサイダー取引は認めても良いでしょうか。特にデメリットがなければ、インサイダー取引を認めることで市場の価格発見機能が促進すれば良いという ことにもなりそうです。

私は、いまのところ、コーポレート・ガバナンス上の理由からインサイダー取引は必要だろうと考えます。

すなわち、取締役がインサイダー取引によって儲けることができると、そっちの方向にインセンティブが働いてしまい、株主が取締役報酬などでインセンティブを 与えようとしても、それが歪められる結果となってしまいます。

取締役の報酬について、長期的な利益を追求するような設計にしようとか、高 額すぎるから制限しようとか、1億円以上の場合には開示しろとか、そういう話は全部無駄になります。

なので、インサイダー取引規制は必要だろうというのが、現時点で考えるところです。

これは、結局のところアメリカの判例法とそんなに変わりません。アメリカの判例法も禁止の範囲を広げるのに無理をしてるなぁと思っていたのですが、本質を良く考えてみると結構よさげです。

と、ここまで考えて満足して、少しググってみたところ、少し違うものの、藤田友敬先生が10年以上前に同じような方向で精緻に論じておられました(「内部者取引規制」大蔵省財政金融研究所「フィナンシャル・レビュー」March-1999)。


考えた結果が外れてないということは嬉しいですが、10年以上前に論じられていたこと(&これまでの実務でそこまでたどり着いていなかったこと)を考えると、複雑な心境です。


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インサイダー取引を禁止する理由は何か、ということは永遠のテーマみたいに議論され続けています。いろいろと立場はあるのでしょうが、自分なりに考えたことをまとめてみます。

もともと、インサイダー取引を禁止する理由は、市場の信頼という点にあるだろうと理解していました。

すなわち、会社の取締役が会社の情報に基づいて儲けていたら投資家(及びディーラー)はバカバカしくて投資したくなくなり、その結果、流動性が低下し、市場の魅力が低下し、さらに流動性が低下し、、、、というからくりです。

(情報を持っていない人が情報を持っている人と取引をすると損をする結果になります。インサイダー取引が許されているということは、情報を持っている人が市場にいるということになり、取引によって損をする可能性が高いと予想される結果となります。「バカバカしくて」というのは、気持ちの問題の他にこういった点もあります。)

ですが、トレーディングの技術が上がってきており、会社の発表する情報が価格に織り込まれるスピードはどんどん上がってきています。

そうすると、情報で儲けようとしているトレーダー以外の投資家(機関投資家も含みます。)からすると、どこかで誰かが情報を持って儲けているけれども、自分は同じように儲けられない(むしろ相手方になった場合に損をする)、ということになります。

なので、インサイダー取引が投資家に「バカバカしくて投資したくない」と思わせる、というのは必ずしも決定的な理由にはならなそうです。


続きます。


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