Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:イギリス公募ファンド

(2) 監視

(a) 変動資本投資会社

米国の投資会社と異なり、イギリスの変動資本投資会社では取締役会が必要とされません。その代わり、受寄者(depositary )が重要な役割を果たします。

受寄者は、資産の保管に対して責任を負うだけでなく、公認取締役の日々のオペレーションを監視する役割も担います。これには、変動資本投資会社の活動が法令を遵守しているかという点についての監視も含まれます。

この監視を行うために、受寄者はいろいろな権利を与えられています。たとえば、受寄者には、変動資本投資会社の株主総会お招集や出席の権利、株主が株主総 会に関して受領することのできる情報を受領する権利、受寄者としての機能を果たすために必要な情報及び説明を会社に対して求める権利などが与えられていま す。

また、監視の役割を適切に行うため、受寄者は会社又は取締役から独立していることが求められます。

(b) ユニット・トラスト

ユニット・トラストの受託者は、信託財産を保有する役割のほか、公認ユニット・トラスト・マネージャーの行為を監視する責任を負います。これは、変動資本投資会社の受寄者と同様の役割です。

法的枠組みが違うことに伴い、細かい点での責任は異なりますが、受託者は、ユニット・トラストの持分保有者の総会を招集する権利、これに出席する権利を与えられています。

また、変動持分投資会社と同様、受託者は公認ユニット・トラスト・マネージャーから独立していることが求められます。

(3) 株主又は持分保有者

変動資本投資会社は、会社であり、株主総会を毎年開催することが義務付けられています。この総会では、公認取締役の選任や一定の活動や取引の承認がなされます。
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イギリス公募ファンドのガバナンス

(1) 日々のオペレーション

日々のオペレーションは、変動資本投資会社については公認取締役(authorised corporate director。ACDと略されます。)が、ユニット・トラストにつては公認ユニット・トラスト・マネージャー(authorised unit trust manager)が担当します。

変動資本投資会社は、1人以上の取締役を有する必要があります。そして、2名以上の取締役を有する変動資本投資会社は、公認取締役を1人選任する必要があり、取締役が1名だけの場合はその者が公認取締役となります。

ユニット・トラストは取締役又はこれに相当する者を有する必要はありません。その代わり、信託証書によってマネージャーとして指定された者が日々のオペレーションを担当します。

このように、公認取締役や公認ユニット・トラスト・マネージャーが集団投資スキームの運営において重要な役割を担うため、イギリスFSAはその行為を規制しています。

具体的には、イギリスFSAの定める「上級経営アレンジメント、システム及びコントロール」(Senior Management Arrangements, Systems and Controls。SYSCと略されます。)の3.1.1が、適切な経営システム及びコントロールの構築を求めています。また、事業の基本原則(Principle of Business )の第8原則では、顧客との利益相反を公正に(fairly)取り扱うことが求められています。

さらに、集団投資スキームソースブック(COLL)は、公認取締役、公認ユニット・トラスト・マネージャー、その他の変動資本投資会社の取締役及び受寄者に対して、集団投資スキームを代理して関連当事者の関係する取引を行うことがないように合理的な注意を求めています。

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イギリスの集団投資スキームの規制は、EUのレギュレーション、イギリスの制定法及びイギリスFSAのレギュレーションによって構成されています。

まず最上レベルの規制として、多くの集団投資スキームは、EUのUCITS指令 (UCITS Directive)があります。イギリスにおいて設立され、承認された集団投資スキームは、欧州経済領域(European Economic Area)内において公募することができます。UCITS指令は、とりわけ、運用会社及び受寄者の要件・機能、投資家への情報開示などについて規定してい ます。

イギリスにおける規制として主たるものは、以下の2つです。
  • 2000年金融サービス市場法(Financial Services and Markets Act 2000。FSMAと略されます。)
  • 2001年オープンエンド投資会社規則(Open-Ended Investment Companies Regulations 2001。OEIC Regulationsと略されます。)
金融サービス市場法はユニット・トラストを、オープンエンド投資会社規則は変動資本投資会社を規制しており、とりわけ、これらのエンティティの設立、承認、運営、及び監視について規定しています。

変動資本投資会社又はユニット・トラストは、公衆向けに勧誘を行うためには、認可指令("authorization order")を得る必要があります。

変動資本投資会社による認可申請は公認取締役と受寄者が、ユニット・トラストによる認可申請はマネージャーと受託者が、共同で行います。申請書には、以下の情報などが詳細に記載されます。
  • 公認取締役、取締役及び受寄者又はマネージャー及び受託者に関する情報
  • 変動資本投資会社又はユニット・トラストに関する情報
  • 投資顧問などの関連当事者に関する情報
変動資本投資会社及びユニット・トラストは、原則として詳細な規定を遵守する必要があります。ただし、投資家がプロである場合には「適格投資家スキーム」(qualified investor scheme)として、規制が緩和されています。


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もう1年前になりますが、ロースクールのペーパーで日米英の公募ファンド法制を比較しました。

そこでは、ガバナンス要件の厳しさの程度によっていろいろな制度設計がありえ、日本の投資信託は契約型としてガバナンスが弱いタイプ、アメリカのミューチュアル・ファンドは会社型としてガバナンスが強いタイプに整理できる、というようなことを書きました。

一見、ガバナンス要件が厳しければ厳しいほど良さそうですが、コストに見合うかどうかの検討は当然に必要であり、公募ファンドの場合に、高度のガバナンス要件を課す必要が本当にあるのかという点は疑問も示されてきています。

なので、どの制度が優れているかは決め難く、歴史を踏まえた各国ごとの選択になる、というのがペーパーの結論でした。

それに関連してイギリスの公募ファンド法制を調べてまとめたので、それを書いていきます。Googleで見ても日本語で説明したものはweb上にほとんどなさそうなので、どこかで誰かの役に立つかなぁと期待。

イギリスの集団投資スキームは以下の2つの類型に分けられます。
  • 変動資本投資会社(investment companies with variable capital。ICVCと略されます。)
  • ユニット・トラスト(unit trusts。認可を受けたユニット・トラストはAUTと略されます。)
変動資本投資会社の定義については、イギリスのFSAにより作成された集団投資スキームソースブック(Collective Investment Schemes Sourcebook。COLLと略されます。)で見ることができ、そこでは、「イギリスを本拠とするオープンエンド型の投資会社」(“the UK-based form of an open-ended investment company”)とされています。

ユニット・トラストは、イギリスFSAにより作成された集団投資スキーム情報ガイド(Collective Investment Scheme Information Guide。COLLGと略されます。)では、「資産が信託受託者によって参加者のために信託により保有される集団投資スキーム」(“a collective investment scheme under which the property is held on trust for the participants by the trustee”)とされています。


続きます。
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