Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:ミューチュアル・ファンド

4.分配テスト

規制された投資会社として税制の優遇を受けるためには、収益の大部分を投資家に対して分配する必要があります。

細かく規定されていますが、大雑把に言えば、投資会社の課税所得の90%、非課税利子所得の90%を投資家に対して分配する必要があります(Section 852(a))。

5.効果

(1) ファンド自体の課税

ファンド自体は法人税の対象となります。

ただし、Section 561の控除適格である分配は所得から控除することができるため、投資家に対して分配することにより連邦所得税を免れることができます。

分配されない場合、残った所得については、通常の会社と同様のレートで法人税が課されます。

98%以上を分配しないと、ファンドはSection 4982に基づく消費税(excise tax)(原則として4%)を払う必要があります。そのため、通常は98%以上を分配しています。

(2) 投資家の課税

ファンドからの分配金は、会社からの配当と同様に、原則として(=earnings and profitsがあれば)、通常所得(ordinary income)の配当(dividend)として課税されます。

分配金については、適格分配所得(qualified dividend income)という制度があり、これは2010末までは譲渡所得と同様に15%で課税されていますが、まもなく失効して、通常のレート(所得に応じ最大 39.6%←これも2011以降。)で課税されます。

純長期譲渡所得(net long-term capital gain)が純短期譲渡損失(net short-term capital loss)を上回る額については、ファンドは、譲渡所得配当(capital gain dividend)として指定することができます。投資家は、ファンドの持分の保有期間にかかわらず、この所得を長期譲渡所得として扱うことができます。

地方政府債券に投資するファンドの場合、非課税利子配当(exempt-interest dividend)という制度もあります。

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ミューチュアル・ファンドは、内国歳入法 Subchapter Mの下、特別な取り扱いがなされています。

ミューチュアルファンドは内国歳入法Section 851の規制された投資会社(regulated investment company。RICと略されます。)として、所定の要件を満たす場合には、通常所得(ordinary income)及び投資家に分配される純実現譲渡所得についての連邦所得税が免除されています。

1.選択

ファンドが、登録投資会社として課税されることを選択すること(Section 851(b)(1))。

2.90%総収入テスト

ファンドの当該課税年度の総収入の90%以上が以下から発生していること(Section 851(b)(2))。
•    配当
•    利子(非課税利子を含む)
•    有価証券貸借取引(Section 512(a)(5)とSection 1058の要件を満たすものに限る。)から生じる所定の支払い。
•    有価証券もしくは外貨の販売その他の処分から生じる譲渡益又はファンドの有価証券又は通貨に対する投資に関して生じるその他の所得(オプション、フューチャー、フォワードの譲渡益を含むがこれに限らない。)
•    適格公衆取引パートナーシップ(qualified publicly traded partnership)の持分から生じる純収入

3.分散テスト(Diversification)

ファンドの課税年度における各四半期の最終日現在において、所定の分散投資がなされていること(Section 851(b)(3))。
具体的には以下の要件を満たしていることが必要です。

(1) ファンドの総資産の50%以上を以下に投資していること。
i    現金、現金項目(債権を含む)、米国政府証券及び他の規制された投資会社の証券。
ii    他の有価証券。ただし、単一の発行者への投資がファンドの総資産の価値の5%超とならないこと、発行者の議決権の10%超を保有しないことが条件。

(2) ファンドの資産の25%超が以下の資産に投資されないこと。
i    米国政府及び他の登録投資会社の有価証券を除いた単一の発行者の有価証券
ii    ファンドが支配し、同様の事業を営む2以上の発行者の証券
iii    1以上の適格公衆取引パートナーシップの有価証券

(1)iiと(2)iの要件がこれだけ見れば少しわかりづらいですが、ステップをふんで検討していけば難しくありません。たとえば、単一の発行者の発行す る証券にファンドが資産の25%を投資していたとしても、残り75%が分散投資されていれば、(1)iiとしてカウントはされませんが、(1)の要件を満 たします。

上記の判定を行うに当たってのルールは、Section 851(c)に規定があります。たとえば、議決権の20%以上を保有していれば「支配」ありとされます。

なお、この分散テストに満たない四半期があった場合でも、ファンドは、前四半期において分散テストを満たしており、かつ当該違反が、当該四半期中の有価証 券の取得によるものではない場合には、分散テストを満たしているものとして取り扱われます。またこれを満たさなくとも、当該違反が四半期終了後30日以内 に解消されるた場合には、分散テストを満たしているものとして取り扱われます(Section 851(d))。

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1. コンプライアンス方針及びコンプライアンス手続き

投資会社法Rule 38a-1及び投資顧問法Rule 206(4)-7は、登録済みのファンド及びアドバイザーに対して、それぞれ、連邦証券法の違反を防ぐため、書面によって、コンプライアンス方針及びコンプライアンス手続きを定めることを求めています。

書面による方針及び手続きは、ファンドの取締役会(独立取締役の過半数を含む。)により承認されることが必要とされています。

また、コンプライアンス方針及びコンプライアンス手続きは年に一度以上見直されることが必要とされています。

2.チーフ・コンプライアンス・オフィサー

投資会社法Rule 38a-4は、各ファンドに対して、コンプライアンス方針及びコンプライアンス手続きの実行に責任をもち、潜在的な利益相反を監視するチーフ・コンプライアンス・オフィサー(Chief Compliance Officer、CCO)の選任を義務付けています。

CCOの選任及びCCOの報酬はファンドの取締役会(独立取締役の過半数も含む。)で承認される必要があり、CCOの解任はファンドの取締役会による行動及び承認によってのみ終了可能とされています。

CCO は、年に一度以上、取締役会に対して、以下の事項を記載した書面による報告書を提出する必要があります。
-ファンド及び各サービス提供者(インベストメント・アドバイザー、主たる引受人、アドミニストレーター、トランスファーエージェント)による方針及び手続きの運用
-方針及び手続きについて少なくとも年に一度なされる見直し以降の重要な変更
-前回の報告からのコンプライアンスに関する重要な出来事

また、CCOは、年に一度以上、独立取締役とCOOだけで会議を持つことが義務付けられています。

CCOの独立性を担保するため、ファンドの役員、取締役、従業員若しくはそのアドバイザー、主たる引受人、又はその指示により行為する者が、CCOに対して不適切な働きかけを行うことは禁止されています。



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2.半期ごとの報告

ミューチュアル・ファンドは、Form N-SARによるセミアニュアル・レポートを、各半期終了後60日以内にSECに提出することが義務付けられています(Rule 30b1-1)。記載内容は詳しく列挙しませんが、財務情報その他の情報を含む必要があります。

3.四半期ごとの報告

ミューチュアル・ファンドは、投資会社法Rule 30b1-5に基づき、第一四半期及び第三四半期の終了後60日以内に、費用、ポートフォリオ投資、運用成績などを記載したForm N-QをSECに提出することが義務付けられています。

4.持分保有者への報告

Rule 30e-1は、ミューチュアル・ファンドに対して半期に一度以上財務諸表その他の情報を含んだレポートを提供することを義務付けています。アニュアルレ ポート、セミアニュアルレポートという形で提供されるのが原則ですが、ミューチュアル・ファンドの場合、目論見書とSAIの提供で代替することもできます (Rule 30e-1(d))。

4.Form N-CSR

Rule 30e-1に基づく持分保有者への報告がなされた場合、ミューチュアル・ファンドは、SECに対して、当該レポートを含む一定の情報を記載した報告書をForm N-CSRにより提出する必要があります(Rule 30b2-1)。

5.委任状説明書(proxy statement)及び委任投票(proxy voting)

委任状の勧誘に関しては、Rule 30b1-4に規定されており、ミューチュアル・ファンドは、Form N-PXにより投票に関する完全な記録を毎年SECに提出することが義務付けられています。また、要求があった場合には、投資家にも提供する必要があります。

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ミューチュアル・ファンドの持分発行時の開示については、前に書きましたが、今回は継続開示についてです。

1.目論見書のアップデイト

ミューチュアル・ファンドは通常継続して募集されますので、勧誘には目論見書が使用され続けます。

目論見書がRegistration Statementの効力発生後9ヶ月を超えて使用される場合、アップデイトが必要となります。目論見書に含まれる情報は、使用時点から16ヶ月以内の情報である必要があります(証券法Section 10(3))。また、その他重要な変更がある場合には、アップデイトしないと目論見書の虚偽記載又は欠落が問題になってしまいます。

Registration Statement効力発生後に行われる修正の効力発生については、証券法Rule 485が適用されます。修正の効力は、Rule 485(a)(1)により、原則として提出後60日(または60日以降80日以内で当事者が指定する日)に自動的に効力発生します。

ただし、新しいシリーズを追加する場合には、Rule 485(a)(2)により、提出後75日(又は75日以降95日以内で当事者が指定する日。)に自動的に効力を発生します。

重要な変更がない場合(財務情報の変更のアップデイト、ポートフォリオマネージャーの変更を含む。)、Rule 485(b)により、直ちに(または当事者が指定する30日以内の日)に効力が発生します。


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