Biz Law Hack - 別館

半匿名ブログで過去に書いた法律記事をこちらに写しました。
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カテゴリ:証券法

FacebookのIPOについて日本でもニュースになっていますが、日本の報道では 具体的に 何が起きているかは述べられていません。

ざっと見てみたところ、Techcrunchには書いてあったので、これをベースにわかりやすく解説してみます。
今回、Facebook自身は1億8000万株しか売却しないのに対し、他の株主は合計2億4123万3615株を売却する。Facebookは上場を引き受けた投資銀行に対し、合計6318万5042株をさらに売却できる30日のオプションを与えている。
http://jp.techcrunch.com/archives/20120517facebook-confirms-ipo-share-price/  

まず、1億8000万株は、Facebookが新規に株式を発行して資金を調達する分です。金商法でいえば「募集」です。1株あたり38ドルがFacebookの手取金になります。

次に、2億4000万株ですが、これは発行済み株式を既に保有している人が売却する分です。金商法でいえば「売出し」です。既存株主は38ドルで売却することになるので、Facebook株式を取得した価格との差額が既存株主の儲けになります。

最後に、6300万株のオプションですが、これは引受証券会社が既存株主から発行済み株式を借りて売却する分です。いわゆるオーバーアロットメントによる売出しです。 引受証券会社は、Facebookの株価が上昇した場合には、 オプションを行使して どんどん売っていくことになります。 

借りた株は返さないといけないのですが、引受証券会社は、以下のどちらかを選択することができます。 
(i) 市場で買って返す方法
(ii) Facebookに株式発行をリクエストする方法

(ii)の場合、 引受証券会社は、IPO時の価格で株式を取得することができます。これをグリーンシューオプションといいます。

ざっくり言うと、返すタイミングでFacebookの株価が下がっていれば(i)の方法を、Facebookの株価が上がっていれば、(ii)の方法を選ぶことになります。


何も見ないで書いたので、わかりやすくはなっていると思いますが、微妙に間違っている可能性があります。もし気づいたら優しく教えて下さい。 

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JOBS ACTについて少し前に紹介しましたが、理論的に興味深い点があります。

金商法上、「勧誘」という概念は非常に広く、投資家に有価証券を買いたくなるような気持ち持たせるようなものを全部含みますが、米国証券法上も同様に広いものとされています。

参考までに、Section 2(a)(3)の定義。 
The term "offer to sell", "offer for sale", or "offer" shall include every attempt or offer to dispose of, or solicitation of an offer to buy, a security or interest in a security, for value.   

現行の建付けでは、需要を喚起するような行為があると勧誘行為ありとされ、公募に該当することになります。私募に関するRule 506などでは、general solicitationは禁止されています。

ところが、JOBS ACTによりこれがなくなるため、需要を喚起するような行為をしても私募のまま取り扱われることとなります。

これまでは、需要を喚起する行為を行うことで購入圧力が生じて・・・ということで勧誘は禁止すべきという議論があるのですが、このべき論は後退していくのではないかと思います。

日本では少し前にファンド持分(金商法2条2項5号など)の勧誘について、勧誘行為をどれだけ幅広くやっても、出来上がりベースで500人いかなければ私募というルールになっています。「勧誘行為を禁止する意味がどれだけあるのか」という議論が進んでいても良さそうですが、あまり進展はなかった気がします。

これから、アメリカではそういった議論が進むはずなので、日本でも議論が深まっていくんでしょうね。


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4月11日から、JOBS Actの意見募集が始まりました。
http://www.sec.gov/news/press/2012/2012-60.htm

JOBS Actとは、Jumpstart Our Business Startups Actの略です。

無理やりJOBSにしようとするあたり、HIRE Actに通じる邪悪さを感じますが、これは全然邪悪な法律ではありません。

内容としては、証券法・取引所法の開示義務を緩和するものです。

法律の名前からするとスタートアップの会社に関する法律に見えますが、スタートアップに限らず開示義務を緩和している点もあります。

たとえば、取引所法Section 12では一定の株主数・株式額の会社についてSEC登録義務を定めていますが、JOBS Actにより基準が緩和されます。なお、12g3-2(b)についてはこちらを参照。

また、Reg DのRule 506については、accredited investorのみを対象とするのであれば、general solicitation/general advertisementは禁止されなくなります。 general solicitation/general advertisement があっても私募として扱ってくれるとは、かなり太っ腹です。

さらに、Rule 144Aでも、 general solicitation/general advertisement が認められることになります。ただし、買い手が適格機関購入者(QIB)の場合か、QIBだと合理的に信じた場合に限られるようなので、どの程度実務に影響があるかはわかりません。

この他、クラウドファンディングについて定めており、英文ニュースなどではここにフォーカスするものも多いですが、日本にいる限り、実務的には重要性は乏しそうです。

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米国に、HIRE Actという悪名高い法律があります。正式名をHiring Incentives to Restore Employment Actといいます。略称をHIRE Actにしようと名前を無理してつけた感じからも、かなり邪悪な雰囲気が醸しだされています。

これは、いま話題のFATCAについて定めていたりもします。FATCAについては過去にエントリがあるので、興味のある方はこちらを参照。

今回のエントリは、FATCAではなく、米国源泉利子の源泉徴収についてです。

内国歳入法Section 871(h)とSection 881(c)は、 米国に源泉のある利子について一定の要件を満たす場合、非米国人に対する課税を免除しています。

これまで(3月18日以前)の免除要件は、以下のとおりでした。
  • 記名式のものはあれこれ書類を整えた場合に限り、免除。
  • 無記名式のものは、ゆるく免除。
3月19日以降、下のほうの免除がなくなりました。そのため、無記名で出す社債なんかは30%の源泉徴収が適用されてしまいます。

何が記名式か、というのはIRSがガイドラインを出しています。No.2012-20というのが新しく出たものです。基本的に振替制度を使っていれば記名式でよいのですが、現物債と交換可能だったりすると無記名式として取り扱われます。

いままでは、無記名式にしたほうがお得だったものが、記名式にしないと損するということで、取扱いを変える必要がある場面も多いと思います。

記名式の場合、あれこれ書類を整える必要があるのですが、これについては、FRTO(Foreign-targeted Registered Obligation)の例外というのがあります。2014年1月1日までの時限的なものですが、書類要件について多少緩和されています。


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タイムリーすぎるタイトルですが、報道になっている件ではなく、前回に引き続きアメリカの話です。

情報提供者をTipper、情報受領者をTippeeと言います。

情報受領者が受領した情報に基づいて取引した場合には、インサイダー取引違反とする必要があります。ですが、何でもかんでも捕捉するのでは広すぎるので、判例法上、「個人的な利益(personal benefit)」が要件とされています。

したがって、情報提供者において、情報開示の見返りとして個人的な利益を得るつもりがなければ、インサイダー取引の責任は問われません。そして、情報提供者が問題なしなら、受領者も責任を問われることはありません。

例えば、会社の役員が非公開情報を一部投資家に提供したとしても、それだけでは発行者株主に対する「裏切り」はありません。なので、受領者のほうで非公開情報を使って取引を違法なインサイダー取引とはされません。

日本のルールに慣れていると、直感的には捉えにくいかもしれませんが、アメリカでは「裏切り」があったかどうかを中心に据えているというのを忘れなければ、わかりやすいかもしれません。

日本の場合、周知する方法として「公表」の意義が具体的に定められており、これによって非公開情報を公にしていくのですが、アメリカではインサイダー取引との関係では「公表」でインサイダー情報性を解消するということにはなっていません。

「裏切り」がなければ一部の人にだけ情報を提供してもいいんじゃないの?というのがアメリカのインサイダー規制です。

でもそれでは情報の非対称性を生み、情報をもっている一部の人が他の人を食い物にしてしまいます。そこで、Regulation FDというのがあり、公表するときはちゃんと周知することが求められています。

日本とはかなり構造が違いますね。 Regulation FDは、インサイダー取引とは関係していますが、 日本とは異なりインサイダー規制に組み込まれているわけではありません。

主な参考判例
前回:O'hagan
今回:Dirks
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